(ダーバン、南アフリカ)[2003/9/9]

【2003年9月9日 全体会合とシンポジウム】

世界公園会議は、2日目から本格的な議論に入った。9日は午前が全体会合、午後が2つのシンポジウムを同時開催した。

全体会合はサウジアラビアのアブドラ王子の司会で開幕、IUCN保護地域部長のデビッド・シェパード(オーストラリア)の挨拶に続き、IUCN環境法委員会のアンジェラ・クロッパー(トリニダッド・トバゴ)が、1992年にベネズエラのカラカスで開かれた第4回世界公園会議からこれまでの流れをまとめた。続いてIUCN世界保護地域委員会委員長のケントン・ミラー(米国)、国連環境計画のクラウス・トプファー(ドイツ)、ミレニアム・エコシステム・アセスメント共同議長のボブ・スコール(南アフリカ)、コンサベーション・インタナショナルのラッセル・ミッターマイヤー(米国)らが基調報告を行った。報告の多くは、この会議で発表された、「2003年保護地域国連リスト」にもとづいている。

世界公園会議は、地球上の保護地域の面積を拡大するという面で大きな役割を果たした。第3回世界公園会議(バリ)のとき、保護地域の面積は世界の陸地面積の3.5%に過ぎなかったが、第4回公園会議(カラカス)において、世界の陸地面積の10%を保護地域にするという目標を設定。現在、陸地面積の11.5%が保護地域となり、その目標は達成された。

しかし、海洋保護地域は世界の海洋面積の0.5%以下でしかない。またバイオーム(生物群系)ごとにみると、温帯草原、湖沼などは、全体の5%以下の面積にとどまっている。また世界の生物多様性の高い地域(ホットスポット)のうち、16%しか保護地域になっておらず、生物多様性の多くは保護地域の外側に存在する。

一方で、気候変動、海面上昇、土壌流出、水資源不足など、人間活動によって、保護地域に対する影響が出ており、むしろ保護地域がこれらの問題に適応し解決策となることを求められている。

ヨルダンのノア女王はこれらの発表に対して、私たちは地球上の土地の所有者ではなく一時的テナントに過ぎない、国境だけでなくさまざまな境界を越えた利益を増やすよう努めなくてはならない、保護地域は量から質の転換を迫られていると述べ、次の目標を提案した。

すなわち、保護地域を生物多様性の保全と持続的発展の場とする、保護地域の緩衝機能・水源涵養機能・レクリエーション機能など多様な機能を評価する、保護地域へのサポートを増やす、保護地域への人々の参加を増やす、保護地域の管理を強化する、の5つである。

午後は、この全体会合を受けて、シンポジウムA「人々に利益を」、シンポジウムB「変化に対応する」の2つが同時開催された。

 

シンポジウムAでは、コスタリカの環境大臣マニュエル・ロドリゲスから、炭素排出者の拠出によるコスタリカ炭素基金をつくり、保護地域の拡大や森林の保全に活用した事例が発表された。

シンポジウムBでは、気候変動に対する保護地域側からの対応が話し合われた。

▲シンポジウムAで発表するナイジェリアの部族長のエメンカ・アニャオク

▲ミレニアム・エコシステム・アセスメントの発表を行う国連大学のハミド・ザクリ(マレーシア)

また昼食時間も惜しんでさまざまなサイドイベントが開催されたが、国連環境計画が主導するミレニアム・エコシステム・マネージメントの最初の報告書である「生態系と人間の福祉」の出版報告が行われた。これは世界の生物多様性の状況を正確に把握し、その変化が人間の生活にどのような影響を与えているかを世界的にモニタリングする計画で、日本では東京大学の大澤雅彦教授(IUCN日本委員会委員長)らが執筆している。

これまでも世界の生物多様性をモニタリングする計画はあったが、直接間接の変化要因が、生態系サービスの低下を通じて、人間の生活に影響を与える状況をアセスメントするという方法が、これまでのモニタリングにないユニークな点である。トリニダッド・トバゴのアンジェラ・クロッパーは、科学的知識と伝統的知識の両方が必要であるとして、世界的なアセスメントと同時に、地域レベルのアセスメントをする必要性を強調した。2005年半ばには、最終的な報告書が出される予定である。

 

(IUCN 日本委員会・日本自然保護協会 吉田正人)

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