(ダーバン、南アフリカ)[2003/9/10]

【2003年9月10日 シンポジウムと全体会合】

世界公園会議第3日目の10日は、午前に2つのシンポジウム、午後に全体会合が行われた。シンポジウムCは、IUCN会長でエクアドルの元環境大臣でもあるヨランダ・カカバツェの司会により、地域共同体と保護地域をテーマに基調講演とパネルディスカッションが行われた。シンポジウムDは、コリドー(生態回廊)などで保護地域をつないでゆくことがテーマであった。私が出席したシンポジウムCを中心にご報告したい。

IUCNのカカバツェ会長は、1日目の挨拶の中で、With People or Without People?というフレーズを使って、地域住民とくに先住民とともに歩む保護地域をめざすのか、それとも先住民を追い出す原生的な保護地域をめざすのか、という問題提起を行った。

 

これに対して、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の環境大臣ボブ・デブスは、オーストラリアでは本来先住民(アボリジニ)のものであった国立公園の土地を彼らに返還し、自然と文化の保護のために国に対して貸借契約を結び、その運営委員会にも先住民の代表に入ってもらうという方法を取り始めていると述べた。

▲IUCNカカバツェ会長の司会で先住民と保護地域の関係を討論

▲シンポジウムで発表するブラジル先住民のローズ・マリア

またブラジルのオティニオ・カステリオも、ニッケルの採掘などの汚染によってプエブロ族などの先住民(インディヘナ)の生活がおびやかされており、先住民とともに保護地域を守る必要性を述べた。

インドのアシッシ・コタリは、地域共同体が管理する保護地域(CCA)の概念を提案し、ヒマラヤやパプアニューギニアではすでに多くの森林が共同体の管理する保護地域となっていると述べた。CCAとはコミュニティー・コンサーブド・エリアの略であり、自然または半自然の地域で、生物多様性上も重要であり、地域共同体が管理する地域と定義される。
日本でも地域共同体によって管理されてきた二次林や草地などに絶滅危惧種が集中し、共有地が見直されている。

 

世界の保護地域は、この10年間で面積が倍増するほどの成長を見せたが、問題は誰がその費用を支払い、その利益を受けるかである。

IUCNは「不確実性の時代のシナリオ~2023年の保護地域」というシナリオブックを発表した。これは20年後の世界がどのようになっているか、「3つのボトムライン(経済、福祉、環境)」「虹の保護地域」「エデンは自分で買え」という3つのシナリオを想定している。

最初のシナリオは、2012年に国連に代わる地球連合という地球国家が設立され、その統治のもとで地球環境の変動に対処する保護地域をめざすというシナリオ。2番目のシナリオは、地域による統治がすすみ、保護地域は地域住民の所有となり、生物多様性は持続的な資源として保護するというもの。最後のシナリオは自由経済がすすみ、保護地域はエコツーリズムによる自主財源でまかなえということになった結果、自然遺産のようなロールスロイス公園が栄える一方、小さな自転車公園は滅びるというシナリオである。10日のワークショップは、このうち2番目のシナリオの可能性を追求したものであったといえよう。

 

(IUCN 日本委員会・日本自然保護協会 吉田正人)

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