(ダーバン、南アフリカ)[2003/9/10]

世界公園会議4日目、いよいよこの会議のメインイベントともいえる3日間連続のワークショップがはじまった。

日本からは環境省、NGOから11人の参加だが、7つのワークショップストリーム、3つのクロスカッティングテーマに分かれて出席している。

ワークショップストリームは、(1)陸と海の連続性、(2)保護地域への支援拡大、(3)保護地域の統治、(4)人材育成、(5)効率の評価、(6)将来の資金、(7)包括的保護地域システムの7つである。クロスカッティングテーマは、(1)海洋保護区、(2)世界遺産、(3)地域共同体と公平性の3つで、いくつものワークショップにまたがっており、ワークショップを中心に腰をすえて参加することもできるし、クロスカッティングテーマを追いかけていくつもの部屋を渡り歩くこともできる。

7つのワークショップは、午前は全員一緒の会議だが、午後からは3つから5つの小グループに分かれるため、11人ではとてもカバーすることはできない。とりあえず、私が出席したワークショップストリーム1「陸と海との連続性(リンケージ)」についてご報告したい。

ワークショップストリーム1「陸と海との連続性(リンケージ)」午前の部は、オーストラリアのピーター・ブリッジウォーターの司会ではじまった。

「陸と海との連続性」というと、サンゴ礁、マングローブ、干潟など沿岸域の保護のことかと思ったら、必ずしもそれだけではなく、陸の保護地域どうしの連続性、保護地域と周辺地域との連続性など広い概念をさしている。

IUCN生態系管理委員会(CEM)のヒラリー・マスンデーレは基調講演の中で、「移動する種にとっては既存の保護地域だけでは不十分であり、生活史を全うできる繁殖地、越冬地、産卵地などすべての範囲を守らなければならず、その移動経路も保護の対象とする必要がある。その移動経路が断たれている場合は、生物コリドーなどによって保護地域をつなぎ、劣化した生態系を回復する必要がある」と述べた。

TNC(米国自然保護協会)のサンハヤンは、「生態系の連続性がなければ、保護地域は大きな動物園に過ぎない。ケニアの首都近くにあるナイロビ国立公園は、クロサイの生息などで知られるが、野生動物の多くは季節移動を行っており、草丈の高い草原になるのを防ぐため、定期的な山火事が必要。またエバーグレーズ国立公園では、定期的な洪水が生態系の重要な要素となっている」として、「保護地域の連続性の確保、保護地域をとりまく景観のマトリックス(パッチ状にさまざまな生態系が存在すること)の確保、山火事や洪水などの生態プロセスをもりこんだ保護地域をつなぐ計画、管理、適応が必要である」と述べた。

 

午後の部は、オランダのグラハム・ベネットが、「連続性を実践に移す」と題して基調講演を行い、保護地域をつなぐコリドーの実践例の分析を報告。保護地域を結ぶコリドーには、線形コリドー、飛び石コリドー、景観マトリクスなどのタイプがあり、海の場合は海洋コリドーのほか汽水域や沿岸域がそのままコリドーとなっている。オランダの高速道路でシカやアナグマの移動障害を回復するエコダクト(長さ140m*幅50mほどの高速道路をまたぐ構造)や、カナダのバンフ国立公園においてバッファロー牧場を撤去してオオカミの移動を確保した、バンフカスケードコリドーの事例が報告された。

講演の後、気候変動への適応、自然再生、共同体の参加の3つの分科会に分かれた。コロンビアのカロライナ・ムルシアが中央アンデスにおける森林再生、米国のキース・バウアーズはチェサピーク湾に流入する河川の湿生植物群落再生の事例を報告。IUCN種の保存委員会(SSC)のマイク・マウンダーは、IUCNの野生生物種の再導入のガイドラインとカルフォルニアコンドルやブラジルのゴールデンタマリンの再導入の事例を紹介し、「野生生物の再導入はあくまでも保護地域管理の一部として行われるべきだ」と述べた。

最後にIUCN生態系管理委員会のデビッド・ラムが、再生(Reclamation)、回復(Rehabilitation)、復原(Restoration)の違いを説明し、「『再生』は人間の都合を優先、『回復』では生態系の機能は戻るが生物多様性は戻らない、『復原』になってはじめて生態系の機能と生物多様性が戻る。保護地域をとりまく広大な景観における自然再生計画では、政府だけではなく土地所有者など民間の協力が必要である」と述べた。

夕方は、アンドリュー・ベネットによる「ランドスケープの連続性~野生生物保護におけるコリドーと連続の役割」の出版記念報告が行われた。

 

(IUCN 日本委員会・日本自然保護協会 吉田正人)

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