(ダーバン、南アフリカ)[2003/9/12]

ワークショップは、7つのストリームラインに分かれた上で、さらに3つから5つの小グループに分かれている。全体像を把握することは難しいが、ストリーム1「海と陸との連続性(リンケージ)」のうち「景観保護地域」の分科会について報告したい。

「景観保護地域(プロテクテド・ランドスケープ)」というのは、IUCNが世界の保護地域の国連リストを作成する際に基準にしている6つの保護地域カテゴリーのうち、5番目のカテゴリー(カテゴリーV)にあたり、人と自然との相互関係によってできた景観を保護するための地域で、生物多様性だけでなく、伝統的文化の保護も含まれている点が特徴である。(ちなみにカテゴリーIは、厳正保護地域または原生保護地域、カテゴリーIIは国立公園、カテゴリーIIIは天然記念物、カテゴリーIVは野生生物生息地、カテゴリーVIは資源管理保護区となっている。日本では、国定公園・都道府県立自然公園の殆どがカテゴリーVに入る)。

世界自然保護モニタリングセンターのスチュワード・シェープは、世界公園会議で発表された「世界の保護地域の現状2003」にもとづき、「カテゴリーVは、ヨーロッパでは保護地域の46.1%を占めているが、他の地域ではまだ少ない」と報告した。ユネスコのミッシェル・ロサは、「世界遺産リストにはフィリピンの棚田など35の文化的景観が登録されているが、その中にすむ人々が生活を維持することができることが課題だ」と語った。

チェコのブラゼナ・フスコワは、社会主義時代に森林伐採がすすんだが、1993年の民主化以後、多くのNGOが生まれて田園景観を取り戻す努力が行われているカルパチア生物圏保存地域の事例を報告し、「景観保護地域は、数多くの果樹の遺伝子の保存にも重要だ」と発言した。景観保護地域ブラジルのクレイトン・リノは、大西洋に面したマタ・アトランティカ生物圏保存地域において自然保護や、教育・エコツーリズムの事例を発表、「絶滅危惧種を守ると同時に、グアラニ族などの生活を守ることが重要だ」と述べた。

インドのカナハイヤ・グジャーは、ラジャスタン州の保護地域周辺で、水資源を守るために住民の選挙によって、川の議会を作った事例を報告、続いてペルー、ボツワナ、ナミビア、ジンバブウェからの報告があり、保護地域を住民の手に取り戻す必要性が主張された。ナミビアのブライアン・ジョーンズは季節的な移住を行う先住民とともに登壇し、「保護地域の設定は、先住民の『心の地図』と反するものであってはならない」と主張した。

IUCN世界保護地域委員会のエイドリアン・フィリップスは、「景観保護地域は、生物多様性の保護だけではなく、住民がスチュワードシップによって自然を維持するモデルとしても、原生的な保護地域の緩衝地帯としても期待がもたれている」としめくくった。景観保護地域のグループは、13日も会合を持ち、公園会議に決議案を提出する予定だ。

 

(IUCN 日本委員会・日本自然保護協会 吉田正人)

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