(ダーバン、南アフリカ)[2003/9/14]

7つのワークショップストリームと平行して、海洋保護区、世界遺産、人々と公平性の3つのクロスカッティングテーマのワークショップが開かれている。13日はUNESCOとIUCNの共同で国境を越えた保護地域と世界遺産に関するワークショップが開かれた。

IUCN世界保護地域委員会のジム・トーセルが、自然遺産の全体像をレビューし、「まだ代表されていない生態系を見つけるギャップ分析を行った結果、湖沼、ツンドラ、温帯草原などのバイオーム(生物群系)が少ないことがわかった。暫定リストの作成が義務づけられるのにともない、バイオームごとのバランスを保った世界の暫定リストを作る必要がある」と述べた。

つづいて、ジュネーブ大学のジュリエット・フォールが、「国境を越えた世界遺産は1979年にはわずか1例だったが、2002年には9箇所にふえた。ユネスコは国境を越えた世界遺産を、各国が推薦することができる世界遺産の上限(1年1箇所まで)の例外として、インセンティブを設けている。しかしこれを実現するには、国ごとに異なる政治状況、仕事の仕方、言語などの障害を乗り越える戦略が必要だ」と語った。

つづいて各国から国境を越えた世界遺産の事例が報告された。ベラルーシのボグダン・ジャロスツェビクスは、ポーランドとベラルーシの境界にあるベロベスカヤ・プスチャ/ビアロウィエザの森の事例を報告、「科学的なモニタリングについては、2国間で同じ手法をとることになったが、教育プログラムについてはようやく交流が始まったところだ。

保護地域にすむヨーロッパバイソンについては共同計画が作れたが、オオカミについてはポーランドでは保護されているのに、ベラルーシでは捕獲されてしまう。もっとも障害となったのは両国の仕事の仕方の違いであった。200m先にある隣国の事務所に行くのに、ビザをとるため2日もかかった。公式な交流以外に、レンジャーどうしの個人的な交流が重要だ」と語った。

国際ゴリラ保護基金のアネット・ジャンローは、コンゴ、ルワンダ、ウガンダの国境にある4つの国立公園のうち世界遺産となっているビルンガ/ビウィンディ国立公園の事例を発表し、「マウンテンゴリラは世界でも670頭に減少しているにもかかわらず、10年つづいた内戦のために森林破壊、土壌流出がすすみ、密猟や軍隊による試し撃ちのために多くのゴリラが命を失っている。ゴリラは年間3千万ドルの観光収入を生み出しており、地元経済のためにもなることを説明し、ようやく環境大臣レベルの覚書が作られた」と経緯を説明した。

インドネシアのマングリ・ペンガンは、マレーシアのサラワクとインドネシアの東カリマンタンの国境を越えた世界遺産の事例を報告、「ボルネオ中央部には、オランウータン3000-3500頭が生息しているが、これを保護するには地域住民の理解と協力が必要なので教育に力を入れている。しかし援助機関の官僚的な仕事のために資金の到着が遅れている」と報告した。

 

南アフリカのゴージフェラドは、南アフリカ、ジンバブウェ、モザンビークの国境にまたがるクルーガー/リンポポ国立公園の事例を報告し、「クルーガー国立公園で増えたゾウやシマウマをリンポポ国立公園に移動させている。生物多様性の保護とともに、地元の貧困の克服が必要だ」と述べた。

国境を越えた世界遺産には、さまざまな課題も多いが、それを乗り越えたときの効果も大きい。イスラエルのヨアフ・サギは、中東の死海から紅海をとおりケニヤータンザニアーモザンビークに続くグレートリフトバレーの世界遺産登録をめざしている。この谷はツルやコウノトリの渡りのルートであるとともに、人類が誕生した場所でもある。このような壮大な計画がユネスコの支援によって計画されていることが報告された。

 

(IUCN 日本委員会・日本自然保護協会 吉田正人)

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