(IUCN 蘇州)[2004/7/1]

2004年6月30日、中国・蘇州で開催された第28回世界遺産委員会において、新たに5ヶ所が世界遺産・自然遺産リストに記載された。グリーンランドのイルリサート・フィヨルド(デンマーク)、スマトラの熱帯雨林遺産(インドネシア)、ランゲル島保護区の自然生態系(ロシア連邦)、南アフリカ・ケープ・フローラル地方の保護地域、ピトン管理地域(セントルシア)である。

2カ所の極周辺の自然地域が、栄誉ある世界遺産リストに記載された。IUCN(国際自然保護連合)の肯定的な勧告を受け、21カ国が構成する世界遺産委員会において、デンマークのイルリサート・フィヨルドとロシア連邦のウランゲル島の世界遺産リストへの記載が満場一致で承認された。「2カ所が極地域から登録されたことは、とても大きな前進です。世界遺産条約は、今や世界レベルでの自然保護における価値ある方策となっています。」とIUCN世界保護地域委員会世界遺産部会副部長、アドリアン・フィリップ氏は述べた。IUCNはUNESCO世界遺産条約の自然遺産に関して助言・支援活動を行っている。その活動の一環として、世界遺産リスト記載候補地の審査を行っている。

スマトラ熱帯雨林遺産もすぐれた普遍的な価値が認められ、世界遺産としてリスト記載された。しかし、世界遺産委員会は、現地の深刻な環境悪化要因、すなわち、IUCN報告書で明らかとなった違法伐採や不法侵入、道路建設などの危機的状況について難色を示した。IUCNは同委員会の承認のもと、インドネシア政府に対し、一年間の状況確認を目的とし、緊急行動計画を作成するよう要求している。また、IUCNは、同委員会に対し、その後進捗状況の確認のため使節団を現地に派遣し、スマトラ熱帯雨林を危機遺産リストに含めることを慎重に検討する必要があると提案している。このことにより、特徴的な価値のある地域を保護するインドネシアの取り組みを支援する国際的関心が高まっている。

「スマトラ森林のような非常に自然度の高い地域が世界遺産リストに記載されたことは、とてもすばらしいことです。一方、インドネシア政府は現地に悪影響を及ぼす多くの要因への取り組みについて、早急に方針を表明する必要があります。残されたスマトラの森林を守ることは、世界的にも非常に優先度の高い自然保護活動です。」とIUCN保護地域プログラム責任者であるディビッド・シェパード氏は述べた。

南アフリカ・ケープ・フローラ保護地域は、世界においても極めて豊かな植物群を有しており、地域内に有名なテーブルマウンテンがある。この地域は満場一致で世界遺産リストに記載された。また政府、NGO、地元住民の協力のもと、境界部の整備、現地保護活動の改善が3年前よりIUCNの提言のもと進められている。

セント・ルシア・ピトン管理地域も今回リストに記載された。いくつかの議論があったものの、カリブ海の途上国に属する小島としては初めてのリスト記載であることから決定に至った。この地域の特徴は2つの切り立った火山性山岳と浸食された溶岩洞窟が海面より隣り合って見事に突き出ていることが挙げられる。

今回、すでに世界遺産リストに記載されている地域で、IUCNの推薦をうけ、登録面積拡大の承認がおこなわれた。その地域はグアナカステ保護地域(コスタリカ)、南大西洋ガウジ・アンアクセシブル島(英国)、スコットランド西岸沖セントキルダ島(英国)である。今回の登録面積の拡大は、英国政府とコスタリカ政府の前向きな政策、保護地域の拡大を受けたものであり、世界遺産条約が国際的自然保護活動の推進において意味あるものであることを特徴づけたと言える。

最後に、世界遺産委員会は、ハワー諸島(バーレーン)、コイバ国立公園(パナマ)の2カ所について決定を延期した。この延期により、各国政府はさらに重要な要素を含む地域を保護地区に含めるため、予定地域の国境を越えた拡張を検討することとなった。ハワー諸島については、当該国はアラブ湾内で共有している海洋生態系に関する国境横断的な協力活動に取り組む必要がある。

世界遺産委員会会議は7月7日まで開催され、他の重要課題、指定地域における自然保護の現状、危機にさらされている世界遺産リストについて審議、IUCNは危機にさらされている世界遺産リストの候補地について説明を行った。

世界遺産条約、世界遺産リストに関する情報は以下のサイト参照
http://whc.unesco.org

世界遺産リストには、現在、134カ国から788件(文化遺産611件、自然遺産154件、混合遺産23件)が登録されている。

世界遺産条約の条文に規定されている独立の助言機関の役割を担っているIUCNは、その始まりから条約に関与しており、1972年のユネスコとともに条約案の作成にも大きな役割を担った。IUCNは世界遺産登録に向けた推薦地域の自然的価値に関する科学的な評価を行い、これまで300箇所の地域を評価してきた。

また、毎年IUCNは特定の自然遺産・複合遺産地域の文化的景観・自然保護の状況について世界遺産センターに報告を行っている。世界遺産地域で何が起きているかというIUCNの評価は、様々な情報源(IUCN会員、現地住民グループ、科学者コミュニティー、IUCN専門委員会メンバー、関心の高い個人)からきている。