現在、専門委員会はどんな活動をしているのか?

IUCN本部で開かれている第64回理事会において、各専門委員会の委員長が、およそ5分間、主なプロジェクトの紹介を行った。

 

災害復旧に対する生態系アプローチの適用(生態系管理委員会委員長、Dr Hillary M. Masundire)

生態系管理委員会(Commission on Environmental Management。以下CEM)は現在、災害後の復旧と回復に対する生態系アプローチの適用に焦点を当てた活動を展開しています。今年の7月にスリランカで開催されたワークショップは好評を博し、CARE、UNEP、Oxfam(オランダ)、が参加し、津波やハリケーンのような事例を紹介しました。上手く管理された生態系というのは、自然災害に対する最もすぐれた防御になります。バングラデシュからの報告では、健全なマングローブやサンゴ礁、砂丘、森林などの自然が、洪水や旱魃といった自然災害に対して生態系が抵抗力を持つということを明快に示してくれました。

会合での主な結論は2つあり、ひとつは、災害の影響を緩和し復元する際に、生態系アプローチを適用するというプロジェクトの概念で、これは、IUCNとして主導的役割を果たしていく事になるでしょう。このプロジェクトは、資金調達に向けて動いています。第2に、このプロジェクトは、CEMの5大テーマである「生態系アプローチ、生態系の復元、生態系を図る指標、生態系管理ツールと生態系サービス」すべてが関係する事で、CEMにとって大きなテーマになるということです。」

世界自然保護ラーニングネットワークの形成(教育・コミュニケーション委員会副委員長、Keith Wheeler)

世界自然保護ラーニングネットワーク(WCLN)が、教育・コミュニケーション委員会(Commission of Education and Communication。以下CEC)の現在の大きな活動です。これは委員会主導の人材育成活動の一環で、持続可能な環境のための教育に関して活動している世界中の自然保護NGOと大学と一緒に進めています。

第1回のWCLNの地域会合をメソアメリカで開催し、40の大学と複数のNGO,IUCNの地域事務所などを交えて、地域ごとの優先課題と人材育成の必要性について議論しました。ワークショップの成果としては、新しい大学間地域ネットワークが設立され、生物多様性と水資源管理とそれへの社会的参加に特に焦点を当てた自然保護の実践者のためのオンライン学習コースを開発する事になります。

2,3の大学が、すぐにでも学習コース開発に着手することに同意し、WCPA副委員長で、国際協力大学の学長でもあるEduard Mueller氏がガダラジャーラ(Guadalajara)大学とラテンアメリカにおける「保護地域管理者のための生態系アプローチ」のコースを開発することになりました。また、ブラジルで開催される生物多様性条約締約国会議の準備として、CIや他の団体と一緒に、生物多様性保全の専門家のためのコミュニケーション・関係管理コースの開発を行う予定です。

次のWCLN会合がすでに計画されており、次は、Stellenbosch大学と共同で、2006年の5月に南アフリカで開催する予定です。

国境をまたぐ自然保護への専門家の派遣(世界保護地域委員会委員長、Mr Nikita Lopoukhine)

世界保護地域委員会(World Commission of Protected Area。以下WCPA)は、国境をまたぐ保護地域(Transboundary Protected Area)の問題に全力を注いでいます。世界中の国々がこのようなタイプの保護地域を設立しようと活動していますが、ロシア・フィンランドにあったかつての鉄のカーテンのように、このような地域の管理は、ますます大きな課題となっています。WCPAの国境をまたぐ保護地域タスクフォースは、国境をまたぐ保護地域をどのように設定し管理するかについてのガイドラインが必要という声に応えて、現在この課題について5つの専門書の執筆に協力しています。その1つが「国境をまたぐ自然保護―保護地域の新たな視点」"Transboundary conservation: A new vision for protected areas"で、コンサベーション・インターナショナルやCEMEXとのパートナーシップの結果、10月初頭に始まるアラスカ、アンカレッジ(Anchorage)での、世界原生地域会議で発表することになりそうです。

国境をまたぐ自然保護には、所有権や規制措置、保護区や自然資源に対する管理当局、地域社会や先住民族など複雑な法律上の疑問も存在します。そのため、CELと法律や所有権についての疑問を、CEESPと管理や共同体参加の問題を解決するために活動しています。

国境をまたぐ保護地域は非常にエキサイティングな仕事で、衝突よりも自然資源の管理に関する協力関係が焦点となっています。WCPAはこの大きなムーブメントに貢献することを熱望しています。

活発な委員会をめざして(環境法委員会委員長、Ms. Sheila Abed de Zavala)

バンコクでの自然保護会議以降、私達の活動の焦点は、これまでとは違う委員会を組織する事でした。新しい運営委員会が発足し、新しい規約を採択し、新しい専門家グループを組織しました。

専門委員会とIUCNとの間を橋渡しし、互いを刺激しあう関係を作るために、専門委員会間の協力についてのグループを作りました。また、新しいコミュニケーション戦略を様々なレベルで計画しました。CEMの専門家グループ内、他の専門家グループ同士、運営委員会そしてCEM全体、そして、IUCNのその他の専門委員会とIUCNの間のコミュニケーション戦略です。様々なレベルで常に情報を流し続けることによって、私達CELのボランティアグループをもっと活発にしたいと思っています。

新しいCECの活動としては、ヤングプロフェッショナルというカテゴリーの創設があります。30歳以下の若手法律家はCELの会員になることができるようになり、CEMに所属する経験豊富な専門家が訓練や知識を与えてくれる一連の助言プログラムに参加することが出来ます。

IUCNレッド・リストの内、絶滅の危機に瀕している種に関し詳しい分析を行ったところ、世界中が絶滅を食い止めるために力を注いでいるにも関わらず、地球上の生物が深刻な脅威にさらされていることがわかった。

アジアゾウの長期保全戦略(種の保存委員会委員長、Dr. Holly T. Dublin)

SSCは、パートナーと共に、南・東南アジア(ネパールからインドネシアまで)に及ぶ14カ国に見られるアジアゾウの長期保全計画の立案に主導的な役割を果たしています。多くの課題が存在していて、生息国はこの象徴的な生物を将来にわたり守っていく事に対して、地域社会の同意を得られるよう熱心に活動しています。来年、生息国対談が開催される予定で、保護活動行動計画の策定が期待されます。これは、自然保護問題を克服するための仲介役として、政府が独立した助言と専門的アドバイスを得るためにSSCを活用するという良い事例になります。

移動性、伝統的民族と自然資源利用のための慣習的部族制度の再建(環境経済・社会政策委員会委員長、Dr Taghi Farvar)

移動性の先住民族と自然資源の持続可能な利用、それが、CEESPが焦点を当てているテーマ領域の1つです。南アフリカのダーバンで開催された世界公園会議とタイのバンコクで開催された世界自然保護会議で採択された先住民、移動性先住民族に関する決議に基づいて、CEESPは地域グループやIUCN会員、そして、最近設立された移動性先住民族の世界連盟(WAMIP)とともに、自然資源保全と先住民族の持続可能な生活を確保するための戦略の立案を行っています。

目標達成にあたって、CEESPの地域のパートナーは、人口問題に関するもっとも大きな課題の1つに、持続可能な自然資源管理を伝統的に行っていた慣習的部族制度の復活(例えば、年長者会議)があると考えました。ある限られた地域、限られた自然資源の中で過剰利用を避けるために季節ごとに移動を繰り返す、特に、遊牧民族や移動性の漁師、ハンター、採集を行うような移動性の民族は、現在、非常に断片化された生態系の中で生活しています。私達の会員やパートナーは慣習的な制度を再び作り上げ、生物多様性や自然資源利用についての先住民の知恵が保護されるように試みているのですが、それらは弱体化し、止まっています。

この貴重な先住民の知恵を失わないためにも、 IUCN会員も含めてCEESPのパートナーは南イランのQashqaiやアゼルバイジャンのShahsevenといった先住民族と一緒に、伝統的制度の再建に向けた活動をしてきました。再建が続けられた結果、彼らの手による決まり(Statutes)が作成され、国家レベルで承認されるまでになりました。WAMIPや「環境と開発に関する国際研究所」、「UNDP乾地開発センター」、CENESTA、「持続可能な開発センター」、「持続可能な遊牧のための世界研究所」といった国際組織もこの活動を支援しています。今後もこれらの機関や先住民族と一緒に、この活動を継続していくつもりです。

(IUCN/本部)[2005/9/27]