2005年がもうまもなく終わりを迎えるに当たり、IUCNの理事会及び事務局を代表して、心からよい新年が迎えられる事を期待しています。この12ヶ月を振り返ってみると、私達みな、この年が私達を凍りつかせるような紛争や自然災害の暗い影に覆われていたことに気づき、私達の星である地球に何が起きているのだろうかと困惑している事でしょう。

21世紀の自然保護は、私達が地球の自然資源に与える蓄積的影響の規模と複雑さにますます立ち向かわなければなくなったようです。種や生態系はかつて自然の保護・復元を目指す私達の出発点でしたが、今日我々は、経済、社会、政治システムの観点そして水文、気候、栄養サイクルという観点から私達の活動を再定義しなければなりません。私達の影響力は、私達の目の前で次々に起こる地球変動の力にうまく対処する事ができるかどうかに関っています。

自然保護活動は、科学界を超えて、効果的に政治や経済といった要因にもっと関っていかなければなりません。文化や地理的多様性を結び、この大きな環境問題に対する連携を形成し、集中的な活動の促進もまた、行わなければなりません。社会の中心から離れた活動は、自然保護を未来と無関係な運動に追い込んでしまいます。私達が持つ生態系や生物多様性、自然資源の持続可能な利用についての知識は、驚異的なペースで拡大し、私達の環境で観察される多くの変化に対処する鍵を握るようになります。

57年の歴史を誇るIUCNは、しばしば、新しいパラダイムシフト・広範な自然保護コミュニティーの戦略の変化に影響を与えてきました。過去12ヶ月を振り返ってみると、我々は時代の変わり目の只中にいるのだと私は信じています。多様なパートナーが参加しておこなわれた、最近のIUCNの活動では、自然保護の成果に到達するためのもっと包括的で革新的なアプローチが求められています。例えば、以下のようなものがあります。

・ワクフ基金:ヨルダン、アンマンのIUCNチームによってイスラムの教育や慈善活動や環境が、自然保護基金の新たな概念のもとで形成され、現在幅広い関係者に紹介されています。最近では第3回イスラム金融財政会議で、プレゼンが行われました。

・コンサベーション・コモンズ:自然保護データのアクセスについては、21世紀において、情報がいかに蓄積され、共有されるかについて再度根本から検討することが必要です。この活動は、部門を越えた40団体以上の組織が参加し、情報共有とネットワーク化について地球レベルの基準・典型の立案を行う、革新的なものです。

・未来のマングローブ:アジア地域で起こった津波によるひどい破壊の後、インド洋の12カ国を支援するために、この「未来のマングローブMangroves for the Future」プロジェクトを立ち上げ、地域の生活と生態系の復元を手を取り合って進めています。この活動では、政府・市民社会、企業から国際・国内の協力者で作った組織コンソーシアムが関る予定です。

・グリーンベルト:バレンツ海からボスポラス海峡にかかるかつて「鉄のカーテン」と呼ばれていた地域で、IUCNは、政府やNGOとともに、生物多様性を保全するための保護地域の生態系ネットワークの形成に向けた活動をしています。これは冷戦後の東西協力の時代を象徴するものです。

・自然保護と鉱工業:将来の採掘事業が及ぼす環境影響の低減に向け、世界の大手16社の採鉱会社が参加する国際鉱工業委員会ICMM (The International Council on Mining and Metalsと行った対話や、ロシア・サハリン油田プロジェクトに関する独立科学委員会などにより、企業の意思決定に対して最新の科学的知見を提供するという、IUCNの世界的なネットワークや専門性の強化が図られました。

・貧困と自然保護:生活様式の持続可能性と貧困緩和の挑戦をつなげるため、IUCNは、2006年から実施される汎アフリカ地域・貧困・自然保護イニシアティブなどの一連の活動に参加することになりました。


・環境ラジオ:ラジオを通じて環境問題を訴えるという事が、カメルーンのヤウンデにある国内事務所の目標になり、毎日放送を行っています。地域の汚染に関する報告から、モントリオールで行われた最新の気候変動会議まで、環境ラジオは、地域・市民と交流しながら、世界の情報を提供しています。

・カウントダウン2010:ヨハネスブルクサミットで各国首脳は、2010年までに生物多様性の喪失割合を元に戻すことを表明しました。IUCNの会員やブリュッセルのチームによってヨーロッパ全体で展開されているこのイニシアティブは、2010年目標に焦点をあて、市民や自治体、省庁そして企業やEUの活動を動かしています。

・国連での自然保護: 2006年にも、IUCNは、政府間プロセスにおける環境サイドの声を強化するためニューヨークでの活動を続けていきます。効果的な国際活動なしには、地域でうまくいっている自然保護も、台無しとなってしまいます。

・海洋保全:IUCNは、国際社会で定められた2012年目標にあわせて、2008年までに世界の代表的な海洋保護区システムの更新を目指して、世界中のパートナーを結集し、支援していきます。

このリストは、ほんのわずかな一例です。破滅のシナリオではない答を模索する世界に対し、どうすれば自然保護が自身を振り返り、見つめ、新たな役割を得る事ができるのかということについて、IUCNの専門委員会、会員、スタッフはみな、もっと多くの事例を提供していることでしょう。科学であり、哲学であり、情熱である自然保護の力は、人々や地域社会、国家を結びつけるという大きな可能性を持っています。しかし、これは、我々が何者あるかという内向きの視点ではなく、周囲が何を必要とし、「環境主義者」としての私達に何を望むのかについてもっと注意を払うということなのです。

2006年を見通してみると、IUCNは、環境団体・ネットワークという地球レベルの共同体のなかで欠かすことの出来ない地位にいることでしょう。その多様な会員、民主的な運営、客観的な評価に基づいた科学、多くの専門・部門を超えたまとまりを作る能力で、その共有課題を定義するため模索を続ける世界に対し、統一と平和と共通の目的をもたらすという困難に向かわなければなりません。自然は、すべての文化や地政学的境界を越えて、自然保護を私達の経済や社会をより持続可能な道へと努力するユニークな道具に変える力を持っています。

ムーサ会長ならびにバンコク総会で選ばれた理事とともに、IUCNは、自然保護を人と自然の関係を新たな軌道に乗せる重要な資源とするという困難で、しかし、わくわくする任務へと向かっていきます。

会員皆さんの平和と幸福な新年を願って。


アキム・シュタイナー (IUCN事務総長)

Achim Steiner
Director General
World Conservation Union (IUCN)

(IUCN/本部)[]