いかに世界遺産地域の現状を評価し、「顕著な普遍的価値」、「完全性の条件」という概念を理解するかが、2005年11月24日~28日に生物圏保存地域に指定されているドイツのフィルム島で行われた能力開発ワークショップにおけるテーマとなった。このワークショップは、ドイツ連邦自然保護庁がIUCN保護地域プログラムと協同し企画したもので、ドイツ連邦環境・自然保護・核安全省からの資金援助のもと実施された。自然保護国際アカデミーが受け入れ機関となり、WCPA専門家グループ、世界遺産センター・ICOMOSの専門家が集まり、IUCNが行う世界遺産候補地の審査プロセスについて学び、そのプロセスの改善方法について検討を行った。

IUCNは世界遺産委員会の自然遺産に関する諮問機関として、自然遺産および複合遺産の候補地を審査することが求められている。審査プロセスは、長期的かつ科学的に厳密なものであり、国際的専門家による書類審査や現地視察、IUCN世界遺産パネルによる審査と内容の濃い調査がおこなわれる。IUCNが国際的な自然保護活動で重要な役割を果たしていけるのは、献身的に活動するWCPA会員との連携のおかげである。しかし、名誉ある世界遺産リストに国内物件を記載することに各国政府が高い関心を示すようになり、政治的圧力が生じる状況にある。この状況の中、IUCNが、審査プロセスの透明性とともに客観的立場、高い水準の技術審査を維持することが、何にもまして必要である。フィルム・ワークショップは、IUCN-WCPA世界遺産専門家・審査委員のネットワーク拡大と研修を目的とし開催し、また一方で世界遺産条約全般の実施体制の拡大に向けた、地球規模のネットワーク構築の検討が目的でもあった。今回をその第1回会合として、向こう数年間の継続的なワークショップの開催が期待されている

あらゆる地域から集まったフィルム・ワークショップの参加者のなかには、WCPAの世界遺産評価委員として多くの審査を担当した者、新らたにの担当となった者も含まれていた。参加者は世界遺産の評価基準について議論を行った。議題は以下の通りである。
・ 複合遺産と文化的景観
・ 地学・海洋地域の国際的な調査研究などを、どのように世界遺産戦略に活かしていくか
・ 各国における候補地への関心の高まりに対し、より適切な説明を行う必要性
・ 世界遺産活動への資源を増加させるための施策

活発な話し合いにより、生物多様性保全、持続可能な開発を目指す世界遺産条約におけるIUCNのリーダーシップの重要性について認識が高まり、またそれらの目標に向けたネットワークとして世界遺産活動に参加者間の強いモチベーションを再確認する事になった。ワークショップでの成果は、世界遺産に関するWCPA戦略、WCPAの専門家・条約加盟国へのガイダンスに今後活用される予定である。

IUCN/WCPAは、今回の重要な世界遺産事業に対する、ドイツ連邦国政府の誠意ある支援に心より感謝している。

ワークショップの報告書は、このWCPA世界遺産条約のHPで公開する予定です。詳しい情報は、ジョルジナ・ピアード世界遺産計画担当者にご連絡ください。georgina.peardjiucn.org

(IUCN/本部)[2005/12/1]