IUCN(国際自然保護連合)は、1948年に世界的な協力関係のもと設立された、国家、政府機関、非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワークです。IUCNは、International Union for Conservation of Natureの略で、自然保護に関する世界最大のネットワークでもあります。 

約1,200の組織(200を超える政府・機関、900を超える非政府機関)が会員となり、世界160カ国から約11,000人の科学者・専門家が、6つの専門家委員会に所属し、生物多様性保全のための協力関係を築いています。また本部はスイスのグランにありますが、会員・専門家のネットワークを支え、フィールドでのプロジェクトを実施する、約1,000人の事務局スタッフが45カ国にいます。日本には、2015年9月現在、大正大学内に「IUCN日本リエゾンオフィス」が設けられています。お問い合わせはこちらからご確認ください。

 

IUCNのVision

IUCNは、"自然を尊び、保全する公正な世界"を目指し、"自然が持つ本来の姿とその多様性を保護しつつ、自然資源の構成かつ持続可能な利用を確保するため、世界中のあらゆる社会に影響を及ぼし、勇気づけ、支援していくこと"を使命としています。

 

IUCNの活動

IUCNは、世界自然保護会議で会員によってまとめられる4カ年計画を指針に、会員・専門委員会・事務局の3者が相乗効果を発揮し一つの成果を挙げるOne Program Approachのもと、世界・国内・地域のレベルで活動が展開されています。60年を越す活動の蓄積に、全世界に広がる会員・専門委員会が持ち寄る新しい視点・イノベーションが、次の新たな取り組みの種になり、常に時代をリードする組織として活動を行っています。現在のIUCN4カ年計画では3つの柱を掲げて活動を展開しています。
 

1.自然の価値を高め、守っていく

Valuing and Conserving Nature

IUCNレッドリストの作成、世界遺産条約へのアドバイスなどがIUCNの活動の核となる自然保護の多くの活動を展開します。自然を守る(Conserving nature)だけでなく、自然の価値(に対する人々の認識)を高めるValuingも重視しています。自然を守るためにも、多くの人々にその自然の意義・意味を知ってもらうことに力を入れていくというメッセージが込められています。
  

2.自然の利用は、効果的で公平な決め方に変えていく

Effective and equitable governance of nature’s use

人は自然から得られる多くの恵みなしには生きていけません。その際に、重視しているのは、governanceという言葉です。IUCNでは、利用を含めた自然と人の関係を決める時に必要な物事・原則・手続きなどを大事にしており、IUCNとして指針を作るとともに、各地域で、人と自然の関係作りの事例を作っています。
 

3.気候、食料、開発という地球課題に対して自然に基づいた解決策を模索する

Deploying nature-based solutions to global challenges in climate, food and development

世界的な課題として、土地利用・自然資源を巡る問題が山積しています。例えば、食料生産のために森林が農地に転換され、農作物生産が気候変動対策のために、バイオ燃料生産に転換されています。そして長期的な傾向として世界人口はますます拡大し、気候変動が農業生産も含めた自然の仕組みに影響を及ぼすことが予想されます。そのような課題に対して「自然から学ぶことで、自然をうまく活用することで、解決をはかっていく」活動を展開しています。IUCNにとって新しい領域で、現場で活動するIUCN会員団体こそが主役となる領域です。

 

IUCNを形作る人々:事務局

IUCNの日々の活動を、監督する機関として理事会が存在しています。理事は、4年に1度開かれる総会(世界自然保護会議)において選出されます。理事会の意志を受けた事務局長が IUCN事務局を運営し、事務局スタッフを指揮しています。そして世界中に事務所をもつIUCN事務局は、会員(加盟している政府および非政府機関)および6つの専門委員会と共に、IUCNの日々の業務を行っています。IUCN事務局は、約1,000人のスタッフを抱えており、100人はスイスのグランにある世界本部に、900人はおよそ60の地域・国事務所に勤務しています。地域レベルや地球レベルでのIUCNのプログラムの実行を支援する広範囲の専門分野や自然保護の経験に表れるように、IUCN事務局は、多文化、多言語です。

 

IUCNを形作る人々:会員

IUCNは、国家、政府機関、非政府機関などの異なる部門による会員で構成されています。政府機関と非政府機関が加盟できるユニークな会員のネットワークが、IUCNの原動力でもあります。会員は、IUCNの使命達成に向けて、それぞれの国内で、また国際的に、互いに影響しあい助け合ってい活動を進めています。IUCNの会員は、4年に1度開かれる世界自然保護会議(IUCN総会)で、下記のことを行います。

IUCNの一般的政策を決定する。

プログラムと予算を承認する。

IUCNの環境に関する使命を実行するための最善の方法を論議する。

国際的な自然保護の主要な課題に対応する。

最近の世界自然保護会議(IUCN総会)は、2012年9月に韓国の済州島で開催されました(公式サイト:http://2012congress.iucn.org/)。また2016年9月にはアメリカ合衆国ハワイにて開催されました(公式サイト:http://www.iucnworldconservationcongress.org/)。

 

IUCNを形作る人々:専門委員会

IUCNには、世界中の生物多様性の保護に取り組む専門家からなる最大のボランティアネットワークが存在し、約11,000人の専門家からなる6つの専門委員会で構成されています。

これらの委員会は、生態学・生物学・地学等の自然科学、自然資源管理、政策、法律、教育、コミュニケーションといった、研究者やその専門性をフィールドに活かす活動家などの優れた専門家がメンバーとなっています。これらの委員会は、自然保護に関する情報の収集、統合、管理、知識の共有といったそれぞれが地球レベル、国レベルで、環境保全の基準や政策の立案の実行に貢献し、IUCNの核となる活動に貢献しています。またこれらの専門家の活動が政府や市民社会が生物多様性の維持のために行う活動に影響をあたえ、人々の生活の要求に基づいた自然資源の保護につながっています。

 

6つの専門家委員会は、それぞれ次のとおりです。

種の保存委員会(SSC)
生物の保護に関する専門家ネットワークです。個別の種(大型ネコ科動物、類人猿)のサブグループもあれば、薬用植物、外来種といった横断的なテーマの専門家も所属しています。
種の保存委員会の公式サイト
 
 

2.世界保護地域委員会(WCPA)
陸域から海洋まで含めた自然保護の「場所」に関わる専門家ネットワークです。世界遺産、自然公園といった保護地域制度の専門家や、レンジャーなどの現場・実践に携わる数多くのテーマで専門性を発揮しています。
世界保護地域委員会公式サイト
 

3.生態系管理委員会(CEM)
森林、海洋といった生態系から、漁業といった広い意味での自然資源管理、自然を活かした自然災害の防災や減災といった「生態系機能」に専門的な知見を有するネットワークです。
生態系管理委員会公式サイト
  

4.教育コミュニケーション委員会(CEC)
自然を守るためには多くの「人」とコミュニケーションをすることが求められます。CECは、教育やコミュニケーションのプロフェッショナルが所属し、コミュニケーションを通じて、自然を守る行動を生み出そうと取り組んでいるネットワークです。
教育コミュニケーション委員会公式サイト
     

5.環境経済社会政策委員会(CEESP)
自然の利用をめぐる不公平、自然をめぐる社会政策、特に経済政策等の専門家が集まっています。先住民や地域共同体が持つ伝統的知識や経験を守り活用するための取り組みなどを展開してます。
環境経済社会政策委員会公式サイト
 
  

6.世界環境法委員会(WCEL)
自然資源を守り、活用する「法律や制度」に特化した専門家グループです。数多くの国際環境条約の起草にも貢献するほか、立法のみならず司法の分野でも活動を展開しています。
世界環境法委員会公式サイト