IUCNは、その60年以上にわたる歴史の中で、世界の自然保護に関わる仕組みづくりに大きな影響を及ぼしてきました。IUCN総会(現、世界自然保護会議)等を通じて、会員のアイディアを結集し、国際条約の種となるアイディアを生み出し、国に専門的な助言をしてきました。国際機関や条約の生みの親であり、強力なサポーターとしてIUCNは今なお大きな影響力を有しています。

国際機関との連携

  1. 国連総会との連携
    国連総会において、自然保護を代表する唯一の常設オブザーバー機関としてのステータスをもち、自然保護の重要性を訴えています。

  2. 国連環境計画との連携
    環境問題を扱う国連組織に対しては、スタッフの交流も多く、特に、イギリスケンブリッジにある国連環境計画世界自然保護モニタリングセンターと、IUCN―レッドリストプログラム事務所は同じ建物中にあり、保護地域のデータベースを協働管理しています。

  3. 地球環境ファシリティーとの連携
    主に先進国からの資金を配分する世界規模の基金(およそ4年間で4500億円規模を運用)に対しては、その基金の活用機関として指定されており、基金を保全の現場で活動する団体へ届ける仲介役を担っています。

 国際条約との連携

  1. ラムサール条約との連携
    湿地の保全と賢明な利用を進めるこの国際条約の事務局はIUCNが担っており、IUCN本部事務所(スイス、グラン)の一角にラムサール条約事務局本部は設置されています。
    詳しくはこちら http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/

    この条約に関わる日本のIUCN加盟団体
    日本自然保護協会、日本野鳥の会、ラムサール・ネットワーク日本、日本湿地ネットワーク、日本国際湿地保全連合

  2. ワシントン条約との連携
    絶滅の恐れのある動植物の国際取引を規制する、この国際条約に対して、レッドリストの知見を提供したり、種の保存委員会メンバーが、この条約の科学委員会に関わっています。
    詳しくはこちら http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/wasntn.html

    この条約に関わる日本のIUCN加盟団体
    WWFジャパン/トラッフィクイーストアジアジャパン、野生生物保全論研究会、自然環境研究センター

  3. 世界遺産条約との連携
    IUCNは、世界遺産条約の自然遺産・複合遺産の指定や管理に関する専門的な助言を行う公式諮問機関に位置づけられています。
    詳しくはこちら http://www.iucn.jp/natural-heritage/protection/cooperation/natural-heritage

    この条約に関わる日本のIUCN加盟団体
    日本自然保護協会

  4. 生物多様性条約との連携
    2010年に第10回締約国会合(COP10)が日本で開かれたことで有名なこの条約に対して、条約本文案の起草の段階から関わっており、科学的な知見から数多くの助言を提供しています。また、IUCN-Jは、COP10の成果を実現するために「にじゅうまるプロジェクト」を展開しています。
    詳しくはこちら http://bd20.jp/know-biodiversity/more-cbd/

    この条約に関わる日本のIUCN加盟団体
    全IUCN加盟団体

  5. ボン条約との連携
    移動性動物の保護に関する協力関係の構築を推進するツールとなっているこの条約に対して、日本は未加盟となっています。そのため、IUCN-Jでは詳しく条約について紹介しています。
    詳しくはこちら http://www.iucn.jp/species/312-cms.html



ヨセミテ国立公園(アメリカ合衆国) 

ヨセミテ国立公園(アメリカ合衆国)

世界遺産条約は1972年の第17回ユネスコ(UNESCO)の総会にて採択された、世界の文化遺産および自然遺産を保護するための国際条約です。世界遺産条約は、世界の顕著で普遍的な価値をもつ文化ならびに自然遺産を認定し、国際協力のもとで保護することを求めています。世界遺産には、文化、自然、複合の各分野があり、それぞれの分野で普遍的な価値をもつ物件を評価し、選出した物件を条約にもとづいて作成される「世界遺産リスト」に登録しています。

 

 

世界遺産リストに登録された遺産は、人類の共有財産とし、人々が協力して保護していかなければなりません。世界遺産リストへの登録は、条約締約国から選出される21カ国の代表からなる「世界遺産委員会」により決定され、フランスのパリのユネスコ本部におかれている世界遺産の事務局のユネスコ世界遺産センターが支援しています。

武陵源の自然景観と歴史地区 (中国)

武陵源の自然景観と歴史地区 (中国)

192カ国(2016年11月現在)が締約国となり、世界で1000以上の遺産が世界遺産リストに登録されています。日本は、1992年に125番目の国として世界遺産条約を批准しました。2016年11月現在、日本では、屋久島、白神山地(ともに1993年に登録)と知床(2005年に登録)、小笠原諸島(2011年に登録)が自然遺産に登録されています。

 

 

環境省日本の世界自然遺産 http://www.env.go.jp/nature/isan/worldheritage/index.html

世界遺産のリスト(英語) http://whc.unesco.org/en/list

世界遺産委員会に対し、公式な諮問機関の役割を担うIUCN

IUCNは、ユネスコの世界遺産委員会に対し助言を行う諮問機関の役割を担う役割として、世界遺産条約本文に定められています。IUCNの世界遺産プログラムおよび世界保護地域委員会(WCPA)が中心となって、自然遺産に関する技術的調査および評価をおこない、自然・複合遺産の登録について助言します。遺産登録後の管理状況の評価も行っています。締約国から推薦された遺産について、一人あるいは複数のWCPAメンバーやスタッフがフィールド調査をし、"顕著な普遍的な価値"を持っていることを説明するため、他の類似の遺産と比較します。チームはまた、自然遺産の完全性や国内の保護制度を調査します。この仕事は、WCPAの世界遺産担当の副委員長が議長を務める世界遺産パネルにより監督されます。また、世界遺産に対する脅威を報告し、開発のダメージからいくつかの遺産を救うため保全状態の評価を行っています。

IUCNは世界遺産アウトルックにおいて自然・複合遺産の保全状態を公開しています
リンク:http://worldheritageoutlook.iucn.org

IUCNの世界遺産関連ページのリンク
リンク:http://cms.iucn.org/theme/world-heritage

2004年に改訂された「世界遺産条約履行のための作業指針(Implementation Guideline)」は、自然遺産のカテゴリーを次の4つに整理しています。

(1)類例を見ない自然の美しさ、あるいは美的重要性を持った地域あるいはすぐれた自然現象を包含すること。
(2)生命進化の記録、重要な進行中の地質学的・地形形成過程あるいは重要な地形学的自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の重要な段階を代表する顕著な見本であること。
(3)陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や生物群集の進化発展において重要な進行中の生態学的生物学的過程を代表する顕著なる見本であること。
(4)学術的・保全的視野から見て、顕著な普遍的価値を持つ絶滅のおそれのある種を含む、生物の多様性の現ゾチ保存のためもっとも重要な自然の生息生育地を包含すること。

 

写真 キリマンジャロ国立公園(タンザニア連合共和国)

写真 キリマンジャロ国立公園(タンザニア連合共和国)

 

写真 グランドキャニオン(アメリカ)

写真 グランドキャニオン(アメリカ)

写真 ココ島国立公園(コスタリカ)

写真 ココ島国立公園(コスタリカ)

 

写真 ンゴロンゴロン保護地域(タンザニア連合共和国)

写真 ンゴロンゴロン保護地域(タンザニア連合共和国)