ラムサール条約とは、容易に破壊されやすい重要な湿地を、世界各国が保全することを目的とし採択された条約です。ラムサール条約による湿地の定義は幅広く、天然の湿地から人工の湿地まで含まれ、自然に作られた湿原だけではなく、川岸、海岸、干潟、水田もラムサール条約でいう湿地に含まれます。

湿地の重要性は、湿地は多くの生きものの生息場所になっていることが関係しています。通常、湿地は魚や貝の生息地となっています。そして、それを餌にする鳥のエサ場でもあり、さらに鳥を捕食するワシ、タカ、獣にとっての重要な餌場でもあります。なにより、渡り鳥にとっては、羽を休め、食物を与えてくれる重要な休息地でもあり、生きものたちにとって重要な生息地になっており、保全の重要性が認識されています。

また、魚や貝といった資源、そして湿地=水という資源は、人間にとっても重要な資源であり、湿地とそこに生息する多様な生物の恵みを受けてきました。そのため、ラムサール条約による湿地保全のあり方は、「賢明な利用(Wise use)」という基本原則に基づいています。資源を活用してきた湿地の、その姿を子孫に伝えられるよう守りながら、湿地からの恩恵を受け、利用と保全を両立していくことが賢明な利用です。また適正に管理された観光利用も、"賢明な利用"にあたります。

ラムサール条約の歴史

湿地は、人間の生活の影響を最も強く受けるところでもあります。例えば、工業廃水、家庭排水などの汚染された水や、土砂、ヘドロが流れ込み、都市に隣接された湿地は、埋め立てられ、工業用地やゴミ捨て場に変わり多くの湿地が消失してきました。現在でも世界中で、湿地が開発の脅威にさらされています。

そこで1971年、世界の湿地を守ろうと、イランのラムサールという町で、水鳥と湿地に関する国際会議が開催され、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が採択されました。この条約は、開催地の名前にちなみ「ラムサール条約」と一般に呼ばれています。条約の事務局は、ラムサール条約本文の定めにより、IUCNが事務局を行うことなっており、IUCN本部事務所の中におかれています(ラムサール条約事務局員は、ラムサール条約会議の取り決めに従って、IUCN事務局とは独立した立場で活動します。

登録指定湿地

ラムサール条約の締約国となるには、その国にある湿地の少なくとも一カ所を指定し、条約事務局にある登録簿に登録することが義務づけられています。締約国は、自国の制度により、登録した湿地の保全を図らなければなりません。

日本の最新情報は環境省HPをご確認ください。
https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/2-3.html  
 

湿地復元の原則と指針

ラムサール条約は、ラムサール登録湿地だけでなく、世界にあるすべての湿地の賢明な利用と湿地の復元を目指しています。2002年11月、スペインのバレンシアで開催された第8回ラムサール条約締約国会議において決議VIII‐8「湿地復元の原則と指針」が採択されました。この指針は、湿地復元が開発の代償措置としてではなく国の湿地保全政策にくみこまれることを目的としています。また、湿地復元の最終目標や達成基準を明確にすること、計画作成は地域住民とともに公開の原則で行うべきこと、復元の結果をモニタリングし、フィードバックする順応的管理の原則を採用することなどが指摘されています。 

賢明な利用(Wise use)

ラムサール条約による湿地保全のあり方は、「賢明な利用(Wise use)」という基本原則に基づいています。人類は、湿地とそこに生息する多様な生物の恵みを受けてきました。その姿を子孫に伝えられるよう守りながら、湿地からの恩恵を受け、利用していくことが賢明な利用です。伝統的な狩猟、漁業などは、これまでその地で代々受け継がれ、続けてこられた"賢明な利用"です。適正に管理された観光利用もまた、"賢明な利用"です。

締約国会議

ラムサール条約は、3年ごとに、条約の改正や、予算を審議したりする締約国会議を開催します。締約国政府のほか、未締約国の政府、国際機関、民間の団体の代表が出席します。締約国は、この会議開催の半年前までに、自国の登録湿地の現状をまとめたナショナルリポート提出が義務づけられています。このレポートにより、各国の登録湿地の保全状況が明らかになります。この会議は、湿地保護の専門家、担当者が一堂に会し、意見を交換する場でもあります。
 

ラムサール条約の課題と日本の取り組み

ラムサール条約に登録されている湿地は、2242カ所(2016年10月現在)にのぼります。締約国も169ヶ国に増えましたが、アジア地域では加入が少なく、より多くの国が参加することが期待されています。締約国であっても、登録湿地が少なかったり、登録湿地が開発の脅威にさらされていたりと、解決していかなければならない問題を抱えています。重要な湿地は全て登録され、賢明に利用されて、子孫に受け継がれていくことがラムサール条約の願いです。ラムサール条約の締約国会議が北海道・釧路市で開催されたことをきっかけとして、国内では日本の市民団体の自発的な活動が数多く展開されています。以下のホームページでは、ラムサール条約湿地を活用した教育・コミュニケーション・参加の事例を数多く発信しているほか、ラムサール条約の情報も充実しています。

ある特定の動物は、エサを探すため、繁殖、子育てをするために長距離間の移動をし、一年のうちで、海、海岸、森林、湖沼、草原といった様々な環境の資源を利用しています。しかし、同時にそれは、彼らを様々な危険にさらしています。例えば、毎年の移動経路上にある、その生き物が利用している自然環境が、開発などで破壊されてしまった場合、その生きものは、休息地や餌場を利用することが出来ず、移動が出来なくなってしまいます。

したがって移動性動物種は、それが横切るすべての国々にとって真の共有財産ともいえ、領域内を定期的に移動するこれらの動物種を保護するにあたって、各国が独立した責任を持つと同時に、共同して保護する責任も負っているのです。

「移動性の野生動物種の保護に関する条約」は「CMS」や「ボン条約」としても知られ、陸生動物類、海洋動物類、鳥類の移動性の種を、対象種の生息地全域にわたって保護することを目的としています。これは、地球規模で野生動物やその生息地の保護を扱っている数少ない政府間の条約の一つです。1983年11月1日にこの条約が施行されてから、現在(2016年8月現在)までで、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの124ヶ国と、加盟国の数を着実にのばしてきました。

ボン条約の加盟国は、
①絶滅のおそれのある移動性動物種の厳格な保護
②移動性動物種の保護と管理に関する多国間協定の締結
③共同研究活動
によって移動性動物種とその生息地を保護するために活動しています。

 移動性動物種が直面する代表的な危機要因と対策

移動性動物種に対する主要な危険要因としては主に、
①生息地の破壊
②ダム、発電所、送電線、フェンスなど、移動に際しての障害
③漁業における偶発的な捕獲(混獲)
④過度な狩猟
⑤移入種
⑥産業汚染
⑦気候変動
などが挙げられます。

これらを減少させるためにボン条約は
1 絶滅の危機にさらされている種(ボン条約の付属書Ⅰにリスト化されている種)対する協調活動と厳格な保護
2 生息国間で、同レベルの保護活動を推進するための協定(ボン条約の付属書Ⅱにリスト化されている種について)
3 共同研究、モニタリング、保護プロジェクト
の実施を定め、保護施策の推進を行っています。

 ボン条約は付属書Ⅰと付属書Ⅱに分かれて構成されており、付属書Ⅰは絶滅の危機にさらされている移動性動物種を、付属書Ⅱは、現在好ましくない保護状態下にあって、国際間の協力が必要とされている種がリスト化されています。

ボン条約の締約国は付属書Ⅰにリスト化されている生きものに関しては、
1 対象生物を厳格に保護する
2、対象生物の生息地を保護、回復する。
3、移動の障害を軽減させる
4、その他の危険となる原因をコントロールする。
という対策が求められます。
付属書Ⅰは、海生哺乳類、陸生哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類が含まれています。例えば、ソデグロヅル、オジロワシ、タイマイ、チチュウカイモンクアザラシ、ダマガゼルなどがリストに掲載されています。

 

アオウミガメ
アオウミガメ

 

ソデグロヅル

ソデグロヅル

 

因みにボン条約の取り決めは、以下のように、法的拘束力のあるものからより非公式なものまで様々なレベルがあります。
・国際協定
・合意事項の覚書
・アクションプランへの参画
また、保全活動には、以下のものがあります。
・種の保護対策
・生息地の保護対策
・調査、モニタリング
・教育および普及
・国境をまたいだ保護対策の強化

望ましい取り組みとしては、種の保全とそのための管理計画(生息地の保護と回復、移動の妨害要因のコントロール、共同研究とモニタリング、教育、加盟国間の情報交換)を体系的に実行することとされています。

 

ボン条約によって保護対策が実現されてきた生物種

 現在までに、ボン条約の下でいくつかの協定が結ばれ、下に記載したような移動性生物種の保護が実施されてきました。
【保護対策が実施されている生物例】
ヨーロッパのコウモリ
地中海と黒海の鯨類
バルト海と北海の小型鯨類
ワッデン海のアザラシ
アフリカ-ユーラシア間を移動する水鳥
ソデグロヅル
シロハラチュウシャクシギ
ウミガメ

ボン条約の運営主体

 国連環境計画の下でボン条約事務局が条約の事務的なサポートをしています。条約の意志決定機関は、締約国会議(COP)で、COPの定例会議のない期間は、常設委員会が政策と運営に関与しています。個々の加盟国とCOPから任命された専門家による科学委員会は、科学的、技術的な事柄に対して助言を与えています。

ボン条約公式ページ(英語)
リンク:http://www.cms.int/