容易に破壊されやすい重要な湿地を、世界各国が保全することを目的とした条約。湿地の賢明な利用が求められています。

ラムサール条約

ベネズエラのマングローブ(C)NACS・J

ベネズエラのマングローブ(C)NACS・J

1971年、イランのラムサールという町で、水鳥と湿地に関する国際会議が開催され、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」という名の条約が採択されました。この条約が、開催地の名前にちなみ「ラムサール条約」と一般に呼ばれています。この条約の事務局は、IUCNの中におかれています。ラムサール条約による湿地の定義は幅広く、天然の湿地から人工の湿地まで含まれ、湿原だけではなく、川岸、海岸、干潟、水田もラムサール条約でいう湿地に含まれます。湿地には多くの生物が集まってきます。魚、貝が生息しており、それを餌にする鳥、さらにその鳥を捕食するワシ、タカ、獣がやってきます。なにより、渡り鳥にとっては、羽を休め、食物を与えてくれる重要な休息地です。その一方で、湿地は、人間の生活の影響を最も強く受けるところでもあります。工業廃水、家庭排水などの汚染された水や、土砂、ヘドロが流れ込み、都市に隣接された湿地は、埋め立てられ、工業用地やゴミ捨て場に変わっていきます。世界中で、湿地が開発の脅威にさらされています。この条約は、容易に破壊されやすい重要な湿地を、世界各国が保全することを目的とした条約です。

登録指定湿地

ラムサール条約の締約国となるには、その国にある湿地の少なくとも一カ所を指定し、条約事務局にある登録簿に登録することが義務づけられています。締約国は、自国の制度により、登録した湿地の保全を図らなければなりません。日本では、2012年11月現在、46カ所が登録されています。

名称 指定年月日 所在地 面積
釧路湿原 1980年6月17日 北海道 7,863 ha
伊豆沼・内沼 1985年9月13日 宮城県 559 ha
クッチャロ湖 1989年7月6日 北海道 1,607 ha
ウトナイ湖 1991年12月12日 北海道 510 ha
霧多布湿原 1993年6月10日 北海道 2,504 ha
厚岸湖・別寒辺牛湿原 1993年6月10日 北海道 4,896 ha
谷津干潟 1993年6月10日 千葉県 40 ha
片野鴨池 1993年6月10日 石川県 10 ha
琵琶湖 1993年6月10日 滋賀県 65,602 ha
佐潟 1996年3月28日 新潟県 76 ha
漫湖 1999年5月15日 沖縄県 58 ha
藤前干潟 2002年11月18日 愛知県 323 ha
宮島沼 2002年11月18日 北海道 41 ha
雨竜沼湿原 2005年11月8日 北海道 624ha
サロベツ原野 2005年11月8日 北海道 2,560ha
濤沸湖 2005年11月8日 北海道 900ha
阿寒湖 2005年11月8日 北海道 1,318ha
風蓮湖・春国岱 2005年11月8日 北海道 6,139ha
野付半島・野付湾 2005年11月8日 北海道 6,053ha
仏沼 2005年11月8日 青森県 222ha
蕪栗沼・周辺水田 2005年11月8日 宮城県 423ha
奥日光の湿原 2005年11月8日 栃木県 260ha
尾瀬 2005年11月8日 福島・群馬・新潟 8,711ha
三方五湖 2005年11月8日 福井県 1,110ha
串本沿岸海域 2005年11月8日 和歌山県 574ha
中海 2005年11月8日 鳥取・島根県 8,043ha
宍道湖 2005年11月8日 島根県 7,652ha
秋吉台地下水系 2005年11月8日 山口県 563ha
くじゅう坊ガツル・タデ湿原 2005年11月8日 大分県 91ha
藺牟田池 2005年11月8日 鹿児島県 60ha
屋久島永田浜 2005年11月8日 鹿児島県 10ha
慶良間諸島海域 2005年11月8日 沖縄県 353ha
名倉アンパル 2005年11月8日 沖縄県 157ha
瓢湖 2008年10月30日 新潟県 24ha
化女沼 2008年10月30日 宮城県 34ha
大山上池・下池 2008年10月30日 山形県 39ha
久米島の渓流・湿地 2008年10月30日 沖縄県 255ha
荒尾干潟
2012年7月3日 熊本県
754ha
円山川下流域・周辺水田 2012年7月3日 兵庫県 560ha
宮島 2012年7月3日 広島県 142ha
中池見湿地 2012年7月3日 福井県 87ha
大沼

2012年7月3日

北海道 1236ha
立山弥陀ヶ原大日平 2012年7月3日 富山県 574ha
東海丘陵湧水湿地群 2012年7月3日 愛知県 23ha
渡良瀬遊水地 2012年7月3日 茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県 2861ha
与那覇湾 2012年7月3日 宮古島 704ha

出典:ラムサール条約事務局、環境省

世界のラムサール条約登録湿地リスト(PDFファイル:45ページ:英語)

湿地復元の原則と指針

ラムサール条約は、ラムサール登録湿地だけでなく、国内にあるすべての湿地の賢明な利用と湿地の復元を目指しています。2002年11月、スペインのバレンシアで開催された第8回ラムサール条約締約国会議において決議VIII‐8「湿地復元の原則と指針」が採択されました。この指針は、湿地復元が開発の代償措置としてではなく国の湿地保全政策にくみこまれることを目的としています。また、湿地復元の最終目標や達成基準を明確にすること、計画作成は地域住民とともに公開の原則で行うべきこと、復元の結果をモニタリングし、フィードバックする順応的管理の原則を採用することなどが指摘されています。

原文をご覧になりたい方はこちらへ(ラムサール条約ウェブサイト)

原文の和訳(日本湿地ネットワーク訳)をご覧になりたい方はこちらへ(PDFファイル9ページ)

賢明な利用(Wise use)

ラムサール条約による湿地保全のあり方は、「賢明な利用(Wise use)」という基本原則に基づいています。人類は、湿地とそこに生息する多様な生物の恵みを受けてきました。その姿を子孫に伝えられるよう守りながら、湿地からの恩恵を受け、利用していくことが賢明な利用です。伝統的な狩猟、漁業などは、これまでその地で代々受け継がれ、続けてこられた"賢明な利用"です。適正に管理された観光利用もまた、"賢明な利用"です。

締約国会議

ラムサール条約による湿地保全のあり方は、「賢明な利用(Wise use)」という基本原則に基づいています。人類は、湿地とそこに生息する多様な生物の恵みを受けてきました。その姿を子孫に伝えられるよう守りながら、湿地からの恩恵を受け、利用していくことが賢明な利用です。伝統的な狩猟、漁業などは、これまでその地で代々受け継がれ、続けてこられた"賢明な利用"です。適正に管理された観光利用もまた、"賢明な利用"です。

締約国会議

ラムサール条約は、3年ごとに、条約の改正や、予算を審議したりする締約国会議を開催します。締約国政府のほか、未締約国の政府、国際機関、民間の団体の代表が出席します。締約国は、この会議開催の半年前までに、自国の登録湿地の現状をまとめたナショナルリポート提出が義務づけられています。このレポートにより、各国の登録湿地の保全状況が明らかになります。この会議は、湿地保護の専門家、担当者が一堂に会し、意見を交換する場でもあります。2012年11月現在163カ国が締約国となっています。最新の締約国会議は、2012年7月ルーマニアのブカレストで第11回目の締約国会議が開かれました。

今後の課題

ラムサール条約に登録されている湿地は、2062カ所(2012年11月現在)にのぼります。締約国も163ヶ国に増えましたが、アジア地域では加入が少なく、より多くの国が参加することが期待されています。締約国であっても、登録湿地の少ないことや、登録湿地が開発の脅威にさらされていたりと、解決していかなければならない問題を抱えています。重要な湿地は全て登録され、賢明に利用されて、子孫に受け継がれていくことがラムサール条約の願いです。

最新のラムサール登録湿地数はラムサール条約事務局の公式サイトへ