IUCNは、世界各地で活躍する会員団体、専門的な知識とその取りまとめを無償で行う研究者、本部のあるスイスや世界各地の地域事務所などで業務を行う事務局など、様々な立場の人が、様々な切り口から関わることで成り立っている特殊な組織です。そのため、IUCNの事業自体も多岐に渡ります。

どの活動の背景にも共通するのは、「科学的な情報に基づく」事業であるということ。生物多様性保全と持続可能な利用を行うために、必要となる科学的な情報を集め、整理し、その情報を活用した事業を世界各地で展開しています。そして、IUCNの事業は、6つの専門家委員会毎・地域毎など、いくつかの切り口で分けることが出来ます。ここでは、トピック毎に見るIUCNの事業を紹介します。

 

トピックごとに見るIUCNの事業

◎種
種の保存のためのプログラム(The IUCN Global Species Programme)は、IUCNとIUCNの種の保存委員会(Species Survival Commition(SSC))が協働して実施されています。下記のような多様な取組を通じて、人々と自然のために種の保存に取り組んでいます。IUCNレッドリストの作成、種の情報サービスの提供条約への専門的なアドバイスの実施、SSCネットワークの支援などを行っています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/species

◎生態系の管理
世界中におけるの人々の福祉健康で安心な生活は、食料や水などを得る健全な生態系に依存し、気候調整や自然災害の軽減からの保全などの生態系を含むエコシステムによって供給されたサービスに依存しています。しかしながらエコシステムの下で、この生態系サービスの持続不可能ではないな利用や、生態系に対する外からの的変化による脅威からの圧力が増加しています。この問題に対処するために、IUCNは生態系管理プログラムを推進しています。生態系管理プログラムの仕事は、下記の内容について行われています。

・乾燥地
 生活の改善のためと、気候変動に適応するために乾燥地の生態系サービスの重要性を実証することを目的としたプログラムです。
・気候変動
 当イニシアティブは、①生物多様性に関連した課題を、適応と緩和に関する政策と実践に取り入れること②人と自然が、気候変動の影響に適応することを助ける、自然資源の管理戦略を拡大することを目的としています。これは、IUCNのプログラム・地域・会員団体を超え、気候変動に関する取り組みを連携させる役割を担っています。
・災害リスク軽減
 生態系管理、生活、コミュニティの脆弱性、気候変動への適応を、災害管理に統合することを推進する目的のプログラムです。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/ecosystem-management


◎環境法
環境法のプログラムは、IUCN世界環境法委員会と環境法センターが含まれ、IUCN環境法アカデミーとも適切に協働しています。国、地域、世界レベルで意思決定者への支援をしており、情報提供・法的分析・助言サービス・立法起草・能力育成などを行う活動プログラムを統合したものです。また、政府・非政府組織などの団体向けフォーラムの実施によるネットワークづくり・情報交換・意見交換の場作りをしています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/environmental-law


◎保護地域
保護地域(国立公園、原生自然地域、地域コミュニティによって保護されている地域、自然保護区など)は、生物多様性保全にとって欠かせない場所です。同時に、地域における人々の生活を支える重要な場所でもあります。国や地域にむけて、陸域・海域への保護地域の設置やシステムの運営を助けることは、IUCNの仕事の中でも最も重要かつ専門性の高い分野です。効果的な保護地域のマネジメントシステムは、生物多様性条約の目的達成のための効果的な要素とされています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/protected-areas


◎世界遺産
世界自然遺産は、世界で最も「顕著で普遍的な価値がある」重要な保護区として認められています。また、このUNESCOの世界遺産条約は、世界で最も重要な保護区約200箇所を守る特殊な枠組みです。IUCNは、その枠組みを支える、世界自然遺産の公式諮問機関としての役割を担っています。

具体的には
・世界遺産候補地の評価
・世界中で活動するIUCN会員組織と協働し、既存の自然遺産の保全状態を監視
・保護地域管理者、政府、科学者や地域コミュニティのキャパシティビルディング
などを行っています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/world-heritage


◎科学と知識
生物多様性保全に関する意思決定のために、IUCNは、「科学に基づいた組織」であることを大切にしています。そして、会員組織やパートナー、専門家委員会や事務局の科学的知識なしには成り立ちません。IUCNは、生物多様性保全のための政策関連のアドバイスを行うため、生物多様性関連の科学的な知識を提供しています。科学知識ユニットはIUCNの科学のための調整中枢としての役割を担っており、プログラムの実施に対して、それに関連する科学的知識が使用されるよう、保証する責任を持っています。政策・保全計画・現場での活動に影響を与える、生物多様性の知識、ツール、スタンダード作りは、IUCNが得意とし、リードしている分野です。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/science-and-knowledge


◎国際政策
国際政策室は、IUCNのプログラムの開発と国際的な自然保護政策の実施において、指揮と助言を行っています。また、IUCNのポリシーやメッセージなど、多様な場で発信されるメッセージの一貫性を保つことも、国際政策室の仕事です。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/global-policy


◎社会政策
IUCNは、
・社会的公平と文化の多様性を受け入れること
・人々の能力と健全な生態系を維持する能力を高めること
・変化し続ける社会で、人と環境の安全性を高めること
以上3点を重要視して、持続可能な生物多様性保全と自然資源管理を促進しようとしています。

社会政策プログラムの仕事は以下の通りです。
・IUCN会員組織や事務局の中での、生物多様性・生態系サービス・人類の幸福・生活・文化的要因の繋がりについての理解を高めること
・社会的課題(先住民族、人権、生物-文化多様性、貧困削減、神聖な自然、人と保護地域、食糧の安全、社会的平等、気候変動による影響の社会文化的側面)に対応するための、IUCN自体のキャパシティを広げること
・効果的で効率的かつ人を中心とした保全と自然資源管理を可能とする仕組みを構築するため、政策提言を行う

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/social-policy


◎ジェンダー
IUCNのグローバルジェンダーオフィスは、環境分野の中にある男女平等の問題に対して、過去12年にわたって広範囲で取り組みを行ってきて、世界的にも認知されています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/gender


◎森林保護
IUCN森林保護プログラムは、地域・政府組織・NGOや企業と協力し、地域主導で行われる、森林の管理を改善する取り組みをサポートしています。IUCNは、人間活動と環境保全のニーズのバランスをどう取っていくのか、今までの経験から学び、国際的・国家的な政策に反映させてきました。ひとつのカギとなるイニシアティブは、アフリカ・アジア・南アメリカなどで沢山のプロジェクトを走らせている「生活と景観(Livelihoods and Landscapes)」です。IUCNは、近年世界でも認められつつあるREDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減:Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation)の枠組みの中で、人と生物多様性の双方に利益があるようにするための重要な役割を果たしています。更に、世界銀行より融資を受けた資金によって行われているGFP(育林パートナーシップ:Growing Forest Partnerships)の中でも、IUCNは中心的な役割を担っています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/forests


◎海洋と極地域
海は、地球表面の70%を占め、非常に多様な世界を支えています。IUCNの世界海洋・極地域プログラム(GMPP:Global Marine and Polar Programme)は、海洋と極地方の環境での重要な問題に、効果的に対処するために取り組みを勧めています。GMPPは、海洋と極地域の生態系が、生物多様性と生産性の観点において維持管理されていること、その資源の利用が公平かつ持続可能であることを目指し、他のIUCNの地域別・テーマ別のプログラムや専門家委員会と一緒になって活動しています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/marine-and-polar


◎水
IUCNの水プログラムは、私たちの水資源を確保するために、IUCN会員、専門家、政府、民間機関などのネットワークを活かし、持続的な解決方法を模索しています。IUCNは、アジアのメコン川、ナイジェリアのコマドゥグ・ヨベ川、タンザニアのパンガニ川流域など私たちの水資源管理と保護のために活動を行っています。富裕層/貧困層・都市部/地域など、全ての水資源を使用する人のため、政策的なポリシー・法律作りなどに関わっています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/water


◎ビジネスと生物多様性
1948年のIUCN創設以来、自然のしくみと多様性を保全するため、IUCNは企業セクターとも協働してきました。自然資源の利用が公平かつ生態学的に持続可能であることを心がけています。国際ビジネスと生物多様性プログラム(BBP:The Global Business and Biodiversity Programme)は、環境・社会問題に取り組む民間のパートナーを支援し、影響を与えるため、2003年に設立されました。この計画で最も優先順位が高い内容は、IUCN理事会によって承認された戦略に基づいたもので、下記のような事業分野の企業と協働することです。
・自然資源に与える影響が大きい、鉱山事業、石油事業、ガス事業
・生物多様性に高く依存する、漁業、農業、林業
・金融業、オーガニック農業、新エネルギー事業、エコツーリズム など

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/business-and-biodiversity


◎経済と環境
豊富な自然は、国々の豊かさに不可欠です。原材料から製造、通商貿易に至る世界経済のすべでの面は、生物多様性と生態系に依存しています。IUCNの国際経済プログラムは、生物多様性から得られる経済的な価値・機会を、人間がうまく掴むを支援するプログラムです。伝統的に、環境経済は、経済活動のコストもしくはフットプリントを見積もり、それらを削減するために、悪い市場インセンティブを変える政策設計を行う際に活用されています。このプログラムは、環境と開発の間にある溝に、「自然を基礎とした解決」を提示することにより、地域・世界での開発問題を解決することを目指しています。

より詳細な情報はこちら(英語HP)
https://www.iucn.org/theme/economics