ある特定の動物は、エサを探すため、繁殖、子育てをするために長距離間の移動をし、一年のうちで、海、海岸、森林、湖沼、草原といった様々な環境の資源を利用しています。しかし、同時にそれは、彼らを様々な危険にさらしています。例えば、毎年の移動経路上にある、その生き物が利用している自然環境が、開発などで破壊されてしまった場合、その生きものは、休息地や餌場を利用することが出来ず、移動が出来なくなってしまいます。

したがって移動性動物種は、それが横切るすべての国々にとって真の共有財産ともいえ、領域内を定期的に移動するこれらの動物種を保護するにあたって、各国が独立した責任を持つと同時に、共同して保護する責任も負っているのです。

「移動性の野生動物種の保護に関する条約」は「CMS」や「ボン条約」としても知られ、陸生動物類、海洋動物類、鳥類の移動性の種を、対象種の生息地全域にわたって保護することを目的としています。これは、地球規模で野生動物やその生息地の保護を扱っている数少ない政府間の条約の一つです。1983年11月1日にこの条約が施行されてから、現在(2016年8月現在)までで、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの124ヶ国と、加盟国の数を着実にのばしてきました。

ボン条約の加盟国は、
①絶滅のおそれのある移動性動物種の厳格な保護
②移動性動物種の保護と管理に関する多国間協定の締結
③共同研究活動
によって移動性動物種とその生息地を保護するために活動しています。

 移動性動物種が直面する代表的な危機要因と対策

移動性動物種に対する主要な危険要因としては主に、
①生息地の破壊
②ダム、発電所、送電線、フェンスなど、移動に際しての障害
③漁業における偶発的な捕獲(混獲)
④過度な狩猟
⑤移入種
⑥産業汚染
⑦気候変動
などが挙げられます。

これらを減少させるためにボン条約は
1 絶滅の危機にさらされている種(ボン条約の付属書Ⅰにリスト化されている種)対する協調活動と厳格な保護
2 生息国間で、同レベルの保護活動を推進するための協定(ボン条約の付属書Ⅱにリスト化されている種について)
3 共同研究、モニタリング、保護プロジェクト
の実施を定め、保護施策の推進を行っています。

 ボン条約は付属書Ⅰと付属書Ⅱに分かれて構成されており、付属書Ⅰは絶滅の危機にさらされている移動性動物種を、付属書Ⅱは、現在好ましくない保護状態下にあって、国際間の協力が必要とされている種がリスト化されています。

ボン条約の締約国は付属書Ⅰにリスト化されている生きものに関しては、
1 対象生物を厳格に保護する
2、対象生物の生息地を保護、回復する。
3、移動の障害を軽減させる
4、その他の危険となる原因をコントロールする。
という対策が求められます。
付属書Ⅰは、海生哺乳類、陸生哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類が含まれています。例えば、ソデグロヅル、オジロワシ、タイマイ、チチュウカイモンクアザラシ、ダマガゼルなどがリストに掲載されています。

 

アオウミガメ
アオウミガメ

 

ソデグロヅル

ソデグロヅル

 

因みにボン条約の取り決めは、以下のように、法的拘束力のあるものからより非公式なものまで様々なレベルがあります。
・国際協定
・合意事項の覚書
・アクションプランへの参画
また、保全活動には、以下のものがあります。
・種の保護対策
・生息地の保護対策
・調査、モニタリング
・教育および普及
・国境をまたいだ保護対策の強化

望ましい取り組みとしては、種の保全とそのための管理計画(生息地の保護と回復、移動の妨害要因のコントロール、共同研究とモニタリング、教育、加盟国間の情報交換)を体系的に実行することとされています。

 

ボン条約によって保護対策が実現されてきた生物種

 現在までに、ボン条約の下でいくつかの協定が結ばれ、下に記載したような移動性生物種の保護が実施されてきました。
【保護対策が実施されている生物例】
ヨーロッパのコウモリ
地中海と黒海の鯨類
バルト海と北海の小型鯨類
ワッデン海のアザラシ
アフリカ-ユーラシア間を移動する水鳥
ソデグロヅル
シロハラチュウシャクシギ
ウミガメ

ボン条約の運営主体

 国連環境計画の下でボン条約事務局が条約の事務的なサポートをしています。条約の意志決定機関は、締約国会議(COP)で、COPの定例会議のない期間は、常設委員会が政策と運営に関与しています。個々の加盟国とCOPから任命された専門家による科学委員会は、科学的、技術的な事柄に対して助言を与えています。

ボン条約公式ページ(英語)
リンク:http://www.cms.int/