IUCN報道発表

「自然保護活動の成功も霞む多くの生物種の減少」

*本文章は、IUCNによるプレスリリースの仮訳です。原文(英語)はこちらをクリックしてください

2015623日(IUCN国際自然保護連合。本部スイス・グラン)

自然保護活動の成功によって、スペインオオヤマネコやグアダルーペオットセイの個体数を増加させる一方、アフリカゴールデンキャット、ニュージーランドアシカ、ライオンがその生存の危機においやられていることが、最新のIUCNレッドリストの発表で明らかとなった。観葉植物として非常に高い金額で取引されるものもあるアジア熱帯地域のアツモリソウの99%が絶滅の危機に瀕している。

今日の発表では、過剰採集や生息地の破壊によって多くの薬用植物に深刻な圧力が係っていることが示されている。

IUCNレッドリストの最新の発表では、77340種が評価され、そのうち22,784種が絶滅の危機にあるとしている。生息地の破壊はIUCNレッドリストに記載されている種の85%で主な絶滅要因とされ、次いで、違法取引、外来種の導入が個体数減少の要因と分析されている。

「今回のレッドリストの更新で、効果的な保全活動は、多大な成果をもたらすことが確信できた」とインガーアンデルセンIUCN事務局長は語る「地域の暮らしや社会を守りつつ、絶滅の淵からスペインオオヤマネコを救ったことは、その最たる見本だろう」「しかし、今回の発表は、私たちの世界が、ますます壊れやすい脆弱なものになりつつあるということを知らせる警鐘ともなっている。私たちを守り、多くのインスピレーションを与え、驚かせてくれるこの魅力的な生命の多様さを守りたいならば、国際社会は自然保護の取り組みを緊急に発展させなければらない」

60年以上にわたり減少を続けてきた結果、2002年に成熟個体が52頭しかいなくなったスペインオオヤマネコ(Lynx pardinus) 2012年までに156頭まで回復した。これをうけ、絶滅危惧A類から、絶滅危惧B類へと移された。スペインオオヤマネコの主なえさとなるウサギの個体数の回復、違法な罠の監視、保全繁殖活動、再導入事業、スペインオオヤマネコが必要とする生態系となるよう土地の使い方を合わせた土地所有者への補償措置などなど、多くの集中的な保全活動のおかげで生まれた成果である。この生物種は、スペイン南西部の二つの地域と、再導入事業が行われたポルトガル南東部にのみ見られる。

「スペインオオヤマネコに関する本当にファンタスティックなニュースで、自然保護活動がしっかりと成果を生み出せるという最高の証となりました」ウース・ブライテンモーサー(Urs BreitenmoserIUCN種の保存委員会ネコ科動物専門家グループ副代表は語る。「しかし、この取り組みはまだまだ終わりではなく、将来にわたって生息地域の拡大や個体数の回復を確保するための保全活動は継続していかなければならない」

狩猟により1800年と1920年代に二回にわたって絶滅したと考えられたグアダルーペオットセイはその状態を改善しつつある。生息地の保護やアメリカ合衆国の海洋哺乳類保護法などの法制度強化によって、今回、準絶滅危惧種(Near Threatened)から、軽度懸念(Least Concern)に移った。グアダルーペオットセイは、1950年代に200頭から500頭に個体数が回復し、2010年には20,000頭にまで回復した。高級毛皮の素材として利用される前は、グアダルーペオットセイは、南カリフォルニア諸島でもっとも数の多いオットセイとされ、およそ20万頭生息していたと考えられている。

今回の更新によると、狩猟から生息地の損失から危機の増大に直面している哺乳類がいることもわかった。アフリカゴールデンキャット (Caracal aurata)は、個体数の減少により準絶滅危惧種から、絶滅危惧類とされた。世界的にみても極めて珍しいアシカの一種であるニュージーランドアシカ(Phocarctos hookeri) は、病気の蔓延、漁業による生息地の改変、魚網に引っかかるなどの事故死により、絶滅危惧類から絶滅危惧B類と危機の判断が引き上げられた。19世紀初頭の商用捕獲によっておきた深刻な個体数減少からいまだ回復する兆しが見られない。

南アフリカにおける保全活動の成功にもかかわらず、他の地域での減少を理由に、ライオンはいまだ絶滅危惧類の評価を保持した。西アフリカの地域個体群は、生息地の転換や非持続可能なハンティングによって引き起こされた捕食動物の減少、人とライオンの接触を理由に絶滅危惧A類と評価された。急速な減少は、歴史的にはライオン有数の生息域であった東アフリカでも記録され、主として、人とライオンの接触や捕食動物の減少に起因する。アフリカ地域やアジア地域双方において、伝統的医薬の材料としてのライオンの骨やその他の部位の取引が、新しい、かつ、緊急の危機要因であることが確認された。

最も美しい観葉植物である、熱帯のアジアのアツモリソウ全84種の評価によって、99%が絶滅の危機にあることが明らかとなった。園芸目的による過剰採集と生息地の破壊が主要因である。この種の国際取引は、ワシントン条約により禁止されている。しかし、国レベルでの適切な法執行の不足から、悪影響の極めて大きい違法取引が継続していると見られる。これらの種の多くは栽培技術も生まれているが、野生個体の損失は、遺伝的多様性の損失や種の存続に悪影響をもたらすものと考えられている。例えば、ベトナム、中国、香港で見られる珍しいPurple Paphiopedilum (ラン科パフィオペディルム属 Paphiopedilum purpuratum)は絶滅危惧A類とされた。危機要因には、アジアや国際的な園芸取引のための生息地の断片化や、野生蘭の容赦ない採集がある。

インドで薬用植物とされている44種が、今回のIUCNレッドリストのアップデートでリスト入りした。過剰採集と生息域の損失により、その全てが絶滅の危機に瀕している。強い毒性を持ち、インドとパキスタンのヒマラヤ地域に固有のAconitum chasmanthum(キンポウゲ科トリカブト属)は、塊茎と根茎の非持続的な採集と、雪崩と高地への道路建設による生息域の損失により、絶滅危惧A類に指定された。アルカロイドを含む塊茎と根茎は、アユールヴェーダやホメオパシーでの薬として大量に採集されている。

カニの仲間であるKarstama balicumKarstama emdiは、唯一の生息地として知られるバリ島のギリ・プトリ洞窟への観光客増加と宗教的行事の実施により、絶滅危惧A類に指定された。カニの仲間に関する研究は、適切な保全戦略作成のために進められている。

カリブ海地域のハゼ類143種のうち、19種が絶滅の危機に瀕している。その原因は、主に1979~2011年の間におきたサンゴ礁生息地面積の59%近い減少によるものと、外来種であるミノカサゴPterois volitans)によるものである。ハゼ類は、海産魚のうち最も大きなのひとつであり、世界で最も小さな脊椎動物を含む、2000種以上から成る絶滅危惧IA類とされている体長1~1.5cmのパンダカミグミア(Pandaka pygmaea)や、絶滅危惧類とされている最大で3cmにしかならないペパーミントハゼ(Coryphopterus lipernes)を含む。最近、軽度懸念と評価されたグラスハゼ(Coryphopterus hyalinus)は外来種であるミノカサゴによる被害の増加から、絶滅危惧類とされた。

一方、今回新たに「絶滅」と判定された種はないが、14種が絶滅危惧A類(絶滅した可能性あり)として評価された。14種には、ハイチの固有種であり、前世紀の間に森林生息地の97%が減少したとされたサカキの一種(Magnolia emarginata)が含まれる。マダガスカル固有の10種のラン(例:白い花を咲かせる(Angraecum mahavavense))も、森林生息域の損失と違法採集により、IUCNレッドリストの絶滅危惧A類(絶滅した可能性あり)となった。

IUCNグローバルスピーシーズプログラムのディレクターであるジェーン・スマートは、「保全活動の結果により、いくつかの種のステータスに改善が見られたことは、励みになります」と述べる。「しかし、今回のアップデートは、私達は依然として、生物種個体数が壊滅的に減少している事を示しています。IUCNレッドリストは、私達がどこにもっとも緊急に注力する必要があるか教えてくれる、生物多様性からの声です。この声は、種を保存し、その損失を止めるため、私達はもっと強い制作を作り、現場の保全プログラムを推進し、今行動しなければならないと、明確に教えています。」