TNFD開示枠組(v1)が、2023年9月に発表されました。検討段階から日本企業は積極的に関与し、TNFDアーリーアダプター(開示枠組みに基づく開示を宣言した企業)には、日本から80社(世界1位)が名乗りを上げるなど、今後、注目が予想されます。
この動きの中で、IUCN-J事務局や会員団体には、企業や開示に携わるコンサルティング会社、そして現場の自然保護の視点から、様々な意見や課題を指摘する声が聞こえていました。担当者として意欲的なケースとそうでないケース、CSRレポートとの違いの中で悩むケース、開示と現場の保全がつながらないのではというNGOの声。自然環境に良いことだけを並べ、本業におけるネイチャーポジティブへの変革に踏み込まない、グリーンウォッシュと批判しておかしくない事例も生まれそうだとの懸念も聞こえました。
日本でこれから進む開示が、TNFDの目的であるネイチャーポジティブに真につながるものにしていくため、自然保護をミッションに掲げるIUCN-Jメンバー有志団体でTNFDを巡る議論を行い、「ネイチャーポジティブに資するこれからの自然関連情報開示に向けた5つのキーメッセージ」として整理しました。
今回の議論に加わったIUCN-Jメンバーの団体は、日本自然保護協会、野生生物保全論研究会、アースデイエブリデイ、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンです。この団体を中心に様々な意見やインプットを、IUCN-J事務局で整理しました
キーメッセージ抜粋
- ネイチャーポジティブの実現には、社会変革(Transformative Change)が必要であり、あらゆる選択肢・手法を通じて、自然の損失を回避し、回復の取組を社会に対して働きかける必要がある。
- 開示は目的ではなく、自然の危機や価値を考慮する経営改革を促すためのプロセスである。
- 自然全体を捉えるべきである
- 行動は、地域景観レベルで、順応性や透明性を確保し、協働で取組まれるべきである
- 社会全体で、ネイチャーポジティブ経営への転換を支援する必要がある
このメッセージの紹介と企業とステークホルダーの対話の場として、4月10日には、セミナー&ダイアログを実施しています。
キーメッセージは、TNFD枠組みに基づく開示がまだ出されていない状況において、先行してステークホルダーの意見を示すことが大事との思いからまとめたものであり、必要に応じて、内容を見直していきたいと思っています。