RCF ASIA 2024では、LEARNING ZONEが開設され、そこでは議論を通して学ぶInspiration Zoneと専門家による実践的なトレーニングによってIUCNのツールを習得するToolbox Zoneが同時並行で進められました。

 

9月5日にToolbox Zoneにて説明された、自然に基づく解決策(Nature-based Solutions: NbS)の自己評価ツールについて紹介します。NbSとは、自然や改変された生態系の保護、管理、再生のための行動であり、持続可能な社会を実現するためのアプローチです。このセッションでは、Nature-based Solutions Assessment Toolと呼ばれる自己評価ツールの説明とその使用方法のレクチャーが行われました。

この自己評価ツールでは、上の図に示すIUCNが定めた8つの基準と28の指標に基づいてプロジェクトがどの程度どの基準を満たしているかを、ユーザーが自分のプロジェクトに対して評価することが出来ます。(各基準の説明は、次のサイトにて日本語で説明されています。https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/2020-020-Ja.pdf )これにより、そのプロジェクトの現状を自ら把握し、改善点を見つけることが出来ます。また、評価は一度きりでなく、プロジェクトの進行に応じて複数回行うことが推奨されていました。これは、長期的にプロジェクトの進捗を追跡し、改善し続けるためです。

 

他にも、このツールを利用するメリットは多くあります。まず、プロジェクトメンバーの知識向上です。この自己評価を通じてメンバーのNbSに関する理解が深まることが期待されます。次に、プロジェクトの透明性です。このツールを使用すると、評価結果やその根拠がドキュメントとして保存されるそうです。これにより、プロジェクトの進捗や課題を可視化できることに加えて、根拠のある説明を行うことが出来ます。他にも、他のプロジェクトとの比較が容易に行えることや、幅広いユーザーが使用できるデザインであることなどがメリットとして挙げられていました。実際、セッション内で使用方法の説明が行われましたが、入力すべき内容が細かく分かれており、選択肢を提示されていることも多く、入力すべき内容に困ることは少ないだろうと感じました。

 

 今回のセッションでは、活発に質疑応答が行われた印象でした。例えば「6年間のプロジェクトにおいて、1年目、3年目、6年目を比較できる機能はありますか。」という質問に対する回答は、比較する機能はなく、この場合3つの異なる評価シートが作成されるため、それぞれを見比べて進捗状況を確認する必要があるとのことでした。これに関して、一つのプロジェクトを長期的に比較することが出来る機能が追加させるとより良くなると考えます。また、大学や民間企業など全ての人が使用することが出来るということでしたが、あまり広く知られていないことが指摘されていました。多くの人が意見を出し合うことで、より良いツールになると思うので、このような話し合いの機会は重要であると感じました。気候変動対策のプロジェクトが生物多様性の損失に繋がることもありますが、このツールを用いることで、そのような状況を未然に防ぐことが出来ると思います。今後、より多くの人が活用し、このツール自身もより良い形に進化していくことを望みます。

 

一般社団法人Change Our Next Decade
坂浦友珠