IUCNアジア自然保護フォーラム2日目には、IUCN専門委員会の活動紹介と参加の呼び掛けが行われました。
IUCNには7つの専門委員会があり、世界の約17000人もの専門家とのネットワークが構築されています。アジア自然保護フォーラムで語られた内容も踏まえながら、7つの専門委員会について紹介します。
IUCN-Jのサイトからも簡単な紹介も見ることができます。
IUCNといえば、絶滅危惧種のレッドリストが思い浮かぶかと思いますが、そのレッドリストを作っているのがこの委員会になります。グローバル評価だけでなく、各国のレッドリストの作成にも協力しています。SSCでは、種の保全に取り組んでおり、食虫植物や菌類も含めた非常に多彩な専門家グループがいます。海洋、淡水、陸上のすべての種に関して、190のグループがあります。これには、分類を超えた気候変動に関するグループや、国ごとの専門家グループも含まれています。SSCのメンバーになるには招待が必要であり、グループによっては非常に厳格な審査があります。そのため、地域の実践者がIUCNのネットワークに参加するのが難しいことがあり、それを改善するために国別の専門家グループを開発したそうです。現在、アジアには中国、シンガポール、インドネシアの3つの国別専門家グループがあります。中国では、400人以上のメンバーが参加しているそうです。
SSCには、全世界で10,100人以上のメンバーがおり、アジアは地域で2番目に多く、21%がアジアです。最大の地域は西ヨーロッパで、25%です。しかし、そのメンバー数には偏りがあり、一部の国ではメンバー数が少ないそうです。例えば、東ティモールやモルディブからはメンバーがいませんし、ブータンやラオスからのメンバーも非常に少ないそうです。韓国もメンバー数は50人未満です。ですから、アジアの他の国々からももっと多くのメンバーが参加してくれることを願っています。
生態系管理委員会は、生態系のレッドリストの作成などを行う専門委員会です。メンバーは、東南アジアに多く、NbS基準の作成にも取り組んでいます。現在は、生態系分類や生態系レッドリストについて、評価作業を進めていて、アジア地域の163の評価を完了したそうです。パキスタンとインドの西海岸地域の国境を越えたマングローブ生態系の評価が完了し、この近くの生態系評価に取り組んでいるようです。委員会メンバーでなくても、この評価に貢献することは大歓迎しており、生物多様性世界枠組みへ報告するためのデータを作成中です。生態系健全性評価は非常に重要で参画してくれる。アジアはIUCNにとって常に重要な地域であることを強調したうえで、もっと多くのアジアの声を聞き、その優先事項を理解し、地域での活動を活性化させたいと話していました。
CECには、環境教育やコミュニケーション、ユースをトピックに扱う専門委員会で、アジア地域に約400人の専門家がいます。Nature Education、ユースエンゲージメントの視点も重視していて、あらゆる領域でユースの参画を推進しています。戦略的コミュニケーションに関するガイドラインも現在CEC内でのドラフトを検討をしています。
CECでは、技術的なサポートや科学的な組織としての活動は少ないですが、最近、UNICEFのために気候変動や環境の持続可能性についての若者の関与を促進するためのコミュニケーションアプローチを理解するための研究を初めて行ったそうです。
WCELには、世界中から集まった約1,300人のメンバーで構成されており、そのうちアジアからのメンバーが約20%を占めています。また、メンバーの約3分の1は若者で、性別バランスもよい専門家委員会です。WCELの使命は、法律の枠組みを強化することです。法律が存在しているだけでは、意味がないため、法律を効果的に実施する方法を見つけることが役割となっています。
WCELには、8つの専門グループが存在し、気候変動、生物多様性、土壌、水、海洋など、それぞれの分野に特化しています。これらの領域はすべて相互に関連しているため、各専門グループが協力して統合的なアプローチを取ることが求められます。また、4つのタスクフォースもあり、これらは新興分野に特化したものです。例えば、権利としての自然や、司法との連携などがあります。また、WCELはグローバルな合意、例えば現在交渉中のプラスチック条約にも関与しています。
アジアではWCELが裁判官に専門知識を提供することで、キャパシティビルディングを行い、専門家と連携するための支援をしているそうです。
CEESPは、自然保護と人間社会の重要な社会的、文化的、環境的、経済的正義とを調和させるために、知識の生成と普及、影響力の動員、行動の促進を行っている専門家委員会です。専門委員の35%がヤングプロフェッショナル(35歳以下)であり、各地域に若手を巻き込み、メンターシップを提供し、若手にとってのスペースを確保しています。IUCNが75年間の歴史を持つ中で、すべての問題を解決したわけではなく、そのメンバーや組織の在り方も変化し、未来の地球を守るためにどのように取り組むべきかを考えることが重要であることから、保全の在り方を考えるReimagine事業を行っています。先住民地域共同体の参画なども推進しており、ジェンダーや保全と人の生活との衝突、地域の生計と自然保護に関わる事業も行っています。
CEESPは、IUCNが20年ビジョンを進める中で、何を再考する必要があるのか?
そしてアジア地域の技術革新やコミュニティの力をどのように反映させるか?
私たちが何を目指すべきか?を問い続けています。
皆さんにもぜひ声を上げ、IUCNが将来どのような組織であるべきかを考え、委員会に参加し、スタッフにも参加を促してほしいそうです。
WCPAの役割は、陸域、海洋、淡水領域での保護区や保全区の効果的なシステムのために、科学的、技術的、政策的なアドバイスを提供することです。保護地域に関するカテゴリーからOECMの基準、技術的なガイダンスなどが知られていますが、政策提言も行っており、生物多様性世界枠組みにより、196カ国で30%を保護区や保全区で保護するという世界的な目標にコミットしたのはこの委員会です。OECMの基準作りや、レンジャーの能力構築や専門職化に力を入れています。2027年には委員会とメンバー、そして事務局が協力して、世界公園会議を開催する予定です。
WCPAはSSCほど大きくはなく、約3,000人のメンバーがいますが、南、東南アジアからのメンバーを募集中で、この地域のメンバー数が、私たちの持つ最大の数になるようにしたいと考えているそうです。
気候危機委員会(CCC)
IUCNの専門委員会の中で最も最近できたのが、この気候危機委員会です。CCCは、前回のITおよび四年に一度の世界自然保護会議で設立され、自然保護連合の第7の専門委員会として、最も信頼性の高い科学的証拠、先住民の知識、そして多くの利害関係者の協力を基に、効果的で公正かつ自然に基づいた気候危機への対策を推進する使命を持っています。政策と正義、解決策とイノベーション、気候と自然の関係、気候資金に焦点を当てたテーマ別グループを持っており、他の委員会と協力して、さまざまな出版物やイベントも開催しています。
現在は、来年の世界自然保護会議に向けて、気候変動やエネルギートランジションに関するモーションを提案予定で、今後は政策提言や気候危機に関する取組みを加速させたいと考えているようです。ウェブサイトも今後充実や専門家グループのリーダーも募集も行っています。
IUCN専門委員会のメンバーになるには?
各専門委員会では、メンバーの募集を行っています。
皆さんもIUCN専門委員会の一員となって、ご自身の視点や可能性を拡げてみませんか?
詳細は、こちらをご覧ください。
IUCN日本委員会事務局 稲場一華