COP16第1週目の最終に当たる10月25日(金曜日)は、午前に第1作業部会、気候変動と合成生物学のコンタクトグループ、午後には、第2作業部会と、計画・モニタリング・報告・レビューと、資源動員の作業部会が開かれたのち、夜7時半からCOP16中間の本会議(Plenary)が開催されました。
本会議では、科学技術助言補助機関会合の議長としてガボンのジョン・ブリーノ・ムシカ氏を、条約の実施に関する補機関会合の議長としてブラジルのクラリス・ニーナ氏を選出しました。
その後、第1作業部会や第2作業部会およびコンタクトグループ等の動きが報告されました。その後、野生生物管理、カルタヘナ議定書の3議題(バイオセーフティクリアリングハウスメカニズム、社会経済配慮、名古屋-クアラルンプール補足議定書)、名古屋議定書の2議題(遵守、名古屋議定書有効性評価)の採択を行いました。
名古屋議定書ABSクリアリングハウスメカニズムや、植物保全戦略も採択を目指しましたが、持ち込まれたbracket(同意できてない箇所)の本会議上の同意が出来ず、週明け水曜日に予定されている本会議に持ち越しました。
スサナ議長からは、週明けの閣僚級会合に6名の首脳級、110名の大臣、23の副大臣(Vice-Minister)、そして70名の様々な機関の代表が参加する予定と発表されました。グリーンゾーンの参加者は登録だけで22,000人といわれていますが、市民が自由に参加できるブルーゾーンには連日4万人近い人が参加しており、大きな盛り上がりを見せていることが報告されました。
26日(この記事を書いているのは26日です)の時点で、4623のオンラインニュースで19422の記事が作成され、その内容は48ヶ国、147ヶ国、オンラインでは累計712億人の目に留まったとされています。(この数字は、日々更新されているほか、掲載記事の一覧が、こちらから観られます )
中間を振り返ると、、、。
GBFの実施加速、成果をはかる指標、実施のための資金拡大、大きな宿題として掲げた「電子化された遺伝子塩基配列情報の利用から生じる利益の保全・持続可能な利用の活用のための多国間メカニズム」の構築に向けた検討がやはり注目議題となりました。また、ホスト国コロンビアが力を入れるのは、先住民地域共同体による自然を守る取り組みへの認識と尊重と支援に関する議題も、連日協議が繰り返されました。
比較的合意が簡単な議題は、決定を早々にまとめ、今後、資源動員、世界枠組みの指標・報告・ギャップ分析(パリ協定のNDCに似た仕組み)、DSIなどの主要議題に集中する見込みです。10月29日、30日には閣僚級会合、31日、1日には閣僚級交渉が計画されているなど、注目はますます高まるでしょう。
フォーラムでは、ビジネスや金融機関の参加が注目される。COP15に700名程度だった参加者数が、CBD事務局関係者によると2000人を超すと言われています。TNFDや、目標設定のSBT-Nature、Nature Positive Initiativeによる「自然の状態の定量化」提案、開示された情報の評価ベンチマーク結果(28日予定)など企業・金融関係の最新動向や成果が発表されるなど、気候変動枠組み条約COPに似た展開を迎えている印象です。
非常に大雑把ですが、主要議題の論点等をご紹介します。
DSI(item9):「電子化された遺伝子塩基配列情報の活用から生じる利益の保全・持続可能な利用への配分に関する多国間メカニズムの検討」。メカニズムの設立に向けたプロセスの合意を目指す。
- トリガーポイント[アクセス][活用][商品][売上]
- どこから[指定産業][あらゆる産業]
- 何を[売上高][特定商品の売上][利益][DSIデータの使用料]
- どこのように[義務][任意(寄付)]
- 生まれた資金の配分[プロジェクトに?][途上国に何らかの配分][IPLCも直接アクセス]
- 資金のホスト[生物多様性枠組みファンド][新基金]
- データの管理
Resource Mob(item11):2030目標GBF実施に必要な目標(=毎年2000億ドル)、先進国から途上国の支援(200億ドル)の実現を目指す
- ①あらゆる資源からの動員(公的と民間のバランス)
- ②革新的メカニズム(クレジット、グリーンボンド)の検討
- ③これらをまとめた「資源動員戦略」の作成
- ④実施のための新基金(DSI利益配分多国間メカニズムとの関係)
Article8(J)(item14):先住民地域共同体(Indegenous People and Local Communities)による保全や慣習的利用、参加等に関する条約の8条(j)項の実施の強化
- ①作業計画(Programme of Work)の作成
- ②作業部会(WG)から、常設補助機関への格上げ
- ③Afro-Decendant(アフリカ系コミュニティ)の尊重と保護の導入 の是非が主要論点
PMRR(item10):国家戦略の計画(Plan)、モニタリング(M)、報告(Report)、報告を取りまとめた分析と検討(R:Review)。効果的なCDPAの枠組み作り
- 地球規模レビューのための、グローバルレポートや、NBSAPの分析。その成果の活用(パリ協定のNDC的な仕組み
- GBFの指標の完了や、改善作業
- 非政府主体の貢献をどう組み込むか
<その他の議題(コンタクトグループ中心に)>
- Mainstr(item17):主流化(Mainstreaming)。多様なセクターにおける生物多様性配慮(統合)のためのガイダンスやツール、課題や教訓を取りまとめる方向で協議。
- Health(item22):生物多様性と健康に関する世界プログラムの作成が中心議題。全般的には合意に近いが、DSIと資金の部分の解決待ち。
- Synbio(item24):合成生物学のリスク評価に関する取組み。ホリゾンタルスキャニングの是非や能力開発のためのメニューを検討中
- Marine(item20):重要海域の特定に関する協議をほぼ完了。海洋沿岸・島しょに関する更なる生物多様性条約としての取組みについて検討中
- CB/TSC(item12):能力開発(Capacity Building)・科学技術協力の略。各地域から、科学技術支援センターを合計33機関指名。その全体調整のための機関をCBD事務局内に置くことで検討。
- Climate(item25):気候変動と生物多様性。生物多様性(条約)の視点から気候変動の緩和・適応に向けて今後何をするかを検討中
- RA-RM:カルタヘナ議定書・リスクアセスメントとリスクモニタリングに関する作業検討中
国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平