10月25日18時から「OECMを区別し、レポートし、モニタリングし、強化するIUCNグローバルガイダンス」というIUCNやWCPA、WWFが主催するサイドイベントに参加しました。

WWFの方からOECMについての解説があり、その後IUCNの新作ガイダンスについて発表とKey Biodiversity Areas(KBA)との関係性について述べられました。

OECMは2028年の生物多様性条約COP14に定義された概念で、簡潔に表すと、長期間の生物多様性域内保全を保護地域以外で動員できる場所といわれています。

生物多様性条約では、OECMに関して4つの基準を提示しています。要点を以下にまとめました。

  • 保護地域ではないこと
  • 管理や統治がされていること
  • 生物多様性域内保全に長期期間の効果的な貢献がされていること
  • 生態系の機能やサービス、文化的、精神的、社会経済的、その他地域関連価値を保全していること

OECMは地球の190万 ㎢以上をカバーしていると言われているそうです。

IUCNは生物多様性条約での決議で、OECMを区別するためのガイダンス作成を提供するよう要請され、ガイダンスを発表しました。


2019年にガイダンスを出していましたが、今回IUCNは2023-2024にかけて新しいガイダンスを発表しました(一部は今後公開予定)。新しいガイダンスでは全ての要素に対する事例を紹介し、優良事例の紹介や世界目標との整合、場所を区別するためのツール、モニタリングやレポートについての詳細も掲載しています。

2019年のレポート:Recognising and reporting other effective area-based conservation measures

2023年のレポート:Site-level tool for identifying other effective area-based conservation measures (OECMs) : first edition

2024年のレポート:Guidance on other effective area-based conservation measures (OECMs)


またIUCNでは、海や淡水、長期期間に関する補足的なレポートも出しています。

テクニカルレポート


このレポートは主にIUCNの保護地域に関する世界委員会(WCPA)というグループでまとめられており、そこではOECMに関するレクチャーやガイダンスなどを多く出版しています。

その他紹介のあったガイダンスやツール

またOECMのうちの30パーセントは、Key Biodiversity Areas(KBA)と重なっていると言われており、KBAについても紹介がありました。

KBAは、生物多様性の世界的な存続に大きく貢献している場所で、現在、全世界に16500地点以上あるそうです。
KBAには、11の基準と客観性、再現性、透明性があり、国や地域間での比較が可能で、生物多様性にとって重要な場所の標準指標となっているそうです。
※参考:A global standard for the identification of Key Biodiversity Areas : version 1.0

最後には、コロンビアでのOECMの登録状況について報告がありました。
コロンビアではOECMの世界のデータベースに2022年までに55地点の登録を行い、現在陸が28.23%、海が48.03%と、政府が30%目標達成のためにコミットしたことが述べられました。

日本においても、自然共生サイトを通じてOECMの登録が進められており、調べてみたところ2024年11月現在159か所のOECMが登録され、海はまだ13.79%ですが、陸は29.52%まで登録されていました。

しかし、今回のセッションにでてきたKBAについては、日本独自で進めてきたために、現在の世界データベースや世界基準に準じていないようです。私自身は、現場と国際の乖離を埋めたくて活動を続けてきましたが、その乖離はこのようなところからきているのか、と一つ理解が深まりました。日本の価値ある自然とその守り手が忘れ去られることのないよう、今   後、より一層世界との連携を進めていきたいと思いました。

 

IUCN日本委員会事務局
稲場一華