生物多様性条約締約国会議(CBD-COP)には、国際会議の参加者や傍聴者はもちろん、生物多様性の最新の動向等に関心のある人も多く集まります。今回は、COPの会議以外の様子を中心に紹介をしながら、国際会議の、多種多様な人の集まるフォーラムとしての側面を、ほんの一部になりますが共有したいと思います。
まず、COPの会場内には、 国際会議の交渉のための会議場以外に、サイドイベントや展示スペースなどがあります。
このようなスペースでは、団体や国などが主催している多くのサイドイベントや展示が、会議と同時並行でいくつも行われていました。そこには、各国のNGOや国連機関だけでなく、国の代表団である政府・省庁の方たちやビジネスセクターの方たちも多く参加していました。(日本からCOPに来ていた方たちに伺ったところ)政府や省庁の方たちは、ここで得た情報を会議の発言や国家戦略作成の参考にすることを目的の一つに、ビジネスセクターの方たちは、生物多様性に関わる最新のビジネスの動向や、持続可能な社会を目指すために、社会に求められている企業の役割などを確認しに来ているようでした。
加えて、COPの会期中には、デモのようなパフォーマンスもいくつか行われていました。
これらのイベントやパフォーマンスでは、会議の重要な議題に対する主張が含まれていて、会議場内やイベントにくる多種多様な方たちへ、各自の取り組みや意見、想いを伝えるための場でもあり、それを基にたくさんの会話や交流も生じていました。
私も、そんなCOP会場内のイベントやPavilionや展示ブースを回り、生物多様性に関わる世界中の方たちのお話を聞いて回ることができました。その中の、印象的な話を一つ共有させてください。それは、Conservation International(国際的な自然保護団体)が行っている、自然と共生した農業技術の普及による、コロンビアの農村への支援の取り組みについてです。
Conservation Internationalは国際的な環境保護団体です。団体に所属しているコロンビア人の女性によると、「コロンビアにはたくさんの農村があり、農村の貧困と、森林の違法伐採という課題がある。時には、コミニティ(おそらく、ある農村の住民)の総意で、貧困のため、違法な森林伐採に関わることもある。一方、かつて違法な森林伐採に関わっていた人が、農業の指導を受け、生活が安定したことで、今では森林保全に関わっているという事例もある。だからこそ、持続可能な農業技術を教え、安心して生きていける土台を作る活動、保全に反する行動に対する代替案の提供はとても大切だと思うし、多くの人が生活の面でも助けられているのだ」とのことでした。
生物多様性保全は、活動家自体や地域住民の生活や心が安定している形であれば、多くの人を巻き込み、推し進めていけると思います。貧困による森林の違法伐採などを考えると、生物多様性保全に反する行動は、様々な背景や理由から生じることもあり、その反する行動自体を責めることもできないのでしょう。これらは、おそらく日本国内でも通じる部分があると思います。
今回、COPで多様な意見や取り組みを聞いていくことで、今後、「どのように活動をすれば、より多くの人を生物多様性保全に巻き込んでいけるのか」「どうすれば多くの人が自然と共生した生活を送れる社会になるのか」という点について、より考えていきたいと感じました。
番外編:会議最終日に、先住民地域共同体に関する事項が採択された場面。先住民地域共同体やユースをはじめ、会場内の多くの人が立ち上がり、拍手や声を上げ、盛り上がりを見せた場面で、とても大きな意味を感じ、印象的でした。
友部コモンズ
横山廉