SBSTTA3日目が終わりました。コンタクトグループが開かれるなど議論が本格化してきました。科学技術的観点から、締約国に助言を行うこの会合ですが、いつものように、政治的な議論も起こるようになり、プレナリー議長もコンタクトグループ議長も、軌道修正の呼びかけを行いますが、議論が収束しないことが出てくるようになりました。

午前のセッション

午前中は、COP17に行うグローバルレビューについて扱う議題3-Bと、外来種について扱う議題4のコンタクトグループが開かれました。外来種のコンタクトグループは、6つの付属書を修正するという一度修正案に火が付いたら終わらなさそうな議論だったのですが、無事に修正は終わったとようです(午後の本会議で報告されました)

グローバルレビューについては、COP17までに立ち上げる専門家会合の作業領域の確認に時間がかかりましたが、一番時間を割いたのが、どのような情報源を基に、グローバルレビューを作成するかという情報源リストの整理でした。

特定の国が、IPBESやIPCCなどの総会を経てまとめられた報告書に限定したいと主張し、ピアレビューなど科学的なアプローチで出来た報告書も組み込むべきという意見と対峙していました。IPBESやIPCCのメッセージは、総会で国が関与してメッセージを作り上げるので、特定政府が”気に入らない”言葉はIPBESやIPCCのメッセージには入らないのですが。こんな議論からも「科学技術的助言」とは何だろうかというのが疑問視されます。

お昼のセッションでは、SDGsのロゴを作ったヤコブさんから、GBFのコミュニケーションマテリアル(ロゴ等)の草案が紹介されました

午後のセッション

午後は、プレナリーが開催され、3つのコンタクトグループ(指標(3-a)、モニタリング枠組み(3-b)、外来種(4))の報告がなされました。指標とモニタリング枠組みは議論を継続、外来種は付属書の修正が完了したとのことです。

その後、気候変動の議題に移りました。

GBFでは、気候変動対策に”Nature-based SolutionsまたはEcosystem-based Approach”という両論併記の記述で政治的に合意されたのですが、NbSへの言及をするかどうかで意見が分かれました。

  • NBS推進側は、「GBFで合意された表記」「気候関係基金の活用の幅が広がる」「気候変動だけでなく、その他の社会課題も統合的に解決するアプローチなので、気候変動適応(Adaptation)のガイドラインしかないEcosystem-based Approachの議論を補完できる」
  • NbS否定側は、「定義は国連環境総会でまとまったが、具体的な考え方はまだ検討途中」「NbSは気候変動に留まらない広い概念」「Ecosystem-based ApporachはCBDで交渉して決めたことなので明確だ」

等の主張の対立があります。

NbSは非常に広い概念で、自然を守る(保護地域を増やす)、再生する(自然地域を増やす)事で、炭素の固定・貯留を推進することが出来、IPCC第6次報告書でも算定されたCO2排出抑制の30%、排出されたCO2の50%を固定するものです。先進国から見れば推進すべきものですが、途上国としては、”CO2を歴史的に排出してきた先進国の責任を棚上げして自然保護とCO2緩和策を途上国にも押し付ける”アプローチと写るのかもしれません(ブラジルの主張がまさしくそうでした)。

小規模NGOも、地域レベルではNbSという言葉の濫用が起きていて、それを批判する声を上げています。IUCNのNbS基準は、そういう誤用を避ける基準になっているのですが、それでは納得しないようです。

「両方のアプローチをその時々でふさわしく取り組むのが大事」というだけで、科学技術的に何も問題はないでしょうと、議長が諫めるのですがなかなか難しい状況です。

気候変動と生物多様性もコンタクトグループが開かれることになりました。

国際自然保護連合日本委員会

事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)