2024年4月10日に、自然関連情報開示をどう読むか~市民の目線からネイチャーポジティブにつながるTNFDを考える~をハイブリッドで開催しました(オンサイト会場は、大手町3×3Lab Future)

 

2023年9月に発表された自然関連財務情報開示枠組みに基づいて日本では80社が開示の準備を始めています。これから出される開示報告が、日本での開示の「相場観」を作る可能性があることから、早期に、市民団体としての思いをまとめ、企業との対話を求めていく必要があると考え企画されたイベントでした。

このイベントに向けて国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)では、有志団体中心に「自然保護の現場に関わる団体から開示の動きが今の自然が失われてしまう社会(ネイチャーネガティブ)を変革し、ネイチャーポジティブにつなげていくため」には、何が必要か、あるいは、現在みられる動きへの懸念など、幅広く意見交換をしました。その意見交換の結果を5つのキーメッセージという形でまとめています。

また、市民団体から見たTNFDや企業活動をまとめようと「生物多様性と企業活動に関するアンケート」を実施して、その実情に迫ってみました。短期間の実施ながら、51件の回答が寄せられ、アンケート回答から、下記のことが見えてきました。

  • 企業による開発、汚染、生物資源の過剰利用を自然保護団体は問題視している
  • 具体的な開発事例では、風力・太陽光・バイオマスなど再生可能エネルギー設備を挙げる回答が多く見られた。その他、国内事例に関して多数の問題が指摘された(自由記述に、半数以上の回答者が具体ケースを答えている)
  • 企業活動による生物多様性保全がされたと感じた経験があるかという問いに、半数が「特になし」との回答。次いで地域団体との協議がなされたという回答に、25%に上った。
  • 企業による生物多様性保全活動への改善案については、17件の具体的な意見や提案が寄せられた。地域の自然に関して、関係する企業との意見交換が求められる(自由記述に3割以上が回答)。
  • TNFD開示枠組みについては、半数が「聞いたことがない、知らない」と回答。

イベントでは、5つのキーメッセージの紹介、上記のアンケートの結果の解説、ならびに、キーメッセージの元となった調達における配慮、認証制度の重要性とリスク、気候変動と生物多様性との連動についてIUCN-Jメンバー団体から紹介を行いました。

アンケート結果はこちらからご覧いただけます(PDF)

当日は、オンサイト会場・オンライン参加合わせて300名を超す登録があり、関心の高さがうかがえました。その半数以上が企業や金融機関でした。このような企業による取り組みへの関心の高まりがある一方、NGOがTNFDを知らないというアンケート結果を大事に受け止める必要があると認識が示されました。

TNFDタスクフォースメンバーである原口真さんを交えての議論では、TNFD開示枠組みは、企業とNGOの自然に関わる共通言語のようなものであるとの指摘がありました。自然の守り手として、自然の損失にもあるいは保全再生にも関わる企業とコミュニケーションができる手法を知らないというのはもったいないことだと思います。

イベント参加者からは、キーメッセージが頭の整理に大変役に立ったという声や、「具体的な活動の内容を伺い、どのような問題意識を持ち、生物多様性の課題に取組まれているのかが理解できたことが大変有益でした。現場を見ることが重要であり、特に経営者等のガバナンス責任者が正しく現状を理解し、適切な方針を定めることが必要であると改めて感じました」などの感想が寄せられました。

「TNFDをめぐるNGOの方々の視点について理解を深めることができました。企業とNGOなどなど、ステークホルダー対話の場が重要に感じています」というご指摘もいただいており、このテーマに限らず、ネイチャーポジティブに向けて何が必要で、どんな取り組みをするべきか、IUCN-Jメンバー団体と検討し、実施していきたいと思います。