重要性を増す先住民族との保全のパートナーシップ
今回のIUCNリーダーズフォーラムにおいて、大きな存在感を放っていたのが先住民族の方々でした。特にフォーラム最終日に登壇した、ブラジルアマゾンで生まれ育ったZaya Guaraniさんのスピーチは、圧倒的な迫力で、会場を全くの別空間に変えてしまう力強さがありました。
今回のフォーラムは、メインテーマがGBFに向けた資金調達と実施計画についてでしたが、多くのセッションで先住民族との関わりが主要な議題となっていました。
自然保全と先住民族
気候変動対策においても、生物多様性の保全においても、行き着く先は先住民族が伝統的に守ってきた土地であり、いわば彼らがこれまでずっと自然保全を担ってきた第一人者ということになります。
そのような認識から、複数のセッションにおいて、ビジネスであり、金融であり、あらゆるGBFの取り組みにおいて先住民族をパートナーとする重要性が熱く語られていました。
先住民族がもらした本音
一方で、コーヒーブレイクで話をする機会があったタイとバングラディシュから参加していた先住民族の女性2名は、セッションで語られていることを「夢ものがたり」「現実とかけ離れている」と少し冷めた視線で見つめていました。
そもそも、先住民族の声を聞くと言いながら、いつも話し合いは欧米人主導で「難しい言語(英語)」で話し合われ、彼女らがそのような場に呼ばれる形である事に疑念を抱いていました。
本当に先住民族と対話をしたいのであれば、欧米人(メインストリームの人という呼び方をしていました)こそが、彼女らの暮らすコミュニティに来て、彼女らの言語で話を聞き、彼女らの世界観を知って欲しいと言っていました。
まだまだ残る大きなギャップ
セッションの中でも、先住民族とのパートナーシップが重要と言われながら、実施面ではまだ制度や仕組みが追い付いていないという声が、途上国や先住民コミュニティの参加者から聞かれました。
特に国際的なイニシアチブや金融の仕組みは先進国で議論され、先住民コミュニティと全くかけ離れた場所で意思決定が行われていることが課題として指摘されていました。
未来に向けた取り組み
こうした現状の中で、ギャップを埋めるためにNGOが大きな役割を果たしていることや、GEFやドイツ政府などが先住民族への直接支援に乗り出していることも紹介されていました。先住民族コミュニティも国際社会に意見を反映すべく、個々で動くのではなく横の連携を強めているという話がありました。
また、何より今回のフォーラムが先住民族について多様な議論が交わされる場となったことに、国際社会の関心があったように思えました。
このようなディスカッションを聞けたことは貴重な経験となりました。これから、NGOとしてどのような役割を担えるのか、より一層考えていきたいと思います。
コンサベーション・インターナショナル・ジャパン
松本 由利子