COP16再開会合が、2月25日10時(現地時間)にFAO本部で始まりました。開会式では、COP16で8年越しの重要海域の修正プロセスの合意、DSIに関するカリ基金の設置、先住民地域共同体に関する作業計画やその検討会議体の常設機関化などの成果を振り返りました。一方、残された課題も非常に重要でその合意に向けた期待が述べられました。その後、議題や進行の確認を行い、続けて、資源動員に関する意見出しが行われました。

午後は、指標および計画・モニタリング・報告・評価に関する2つの文書を議論しました。指標は、ターゲット7汚染の特に農薬に関する指標とターゲット16持続可能な消費と生産に生態系フットプリントや消費に関する指標について議論が行われました。

報告枠組みについては、基本的に議長テキストを基に意見が出されました。多くの国が原案を指示しつつ、いくつかの注文やプロセスへの質問が出されました。国別報告書作成のための資金や技術的支援の有無(資源動員戦略と連動)、レビューのための報告書作成とそのための意見照会タイミングなどのスケジュールがタイトであること、政府以外の自発的貢献の扱い、グローバルストックテイクが機能するか(各国の貢献度を加算(蓄積)すること。保護地域面積を足して、世界目標の30by30に到達するか検証することが想像しやすいと思います)などの意見がありました。

また、資金メカニズムでは、資源動員に関係する非合意点は資源動員の非公式協議の結果を待つとし、地球環境ファシリティーに関するその他の論点を解決しました。

夜には、締約国の代表者1名+1名のみの参加に絞った非公式交渉による資源動員の協議が行われました。

資源動員への意見

ざっと聞く限り、先進国、途上国共に議長整理のノートを軸に議論されているように感じました。

ここで議長整理をまとめると、

めざすこと:GBF実施のための資金ギャップを埋めることが大事。

第18回締約国会議(2028)において、生物多様性への資金のための世界的な手段(Instrument)または手段のセットを指定または設立し、第19回会合(2030)で完全な運用を達成すること

上記を視野に、既存の手段のパフォーマンスを評価し改善することを含め、現在の世界的な生物多様性資金構造(Financial Architectureという用語で整理)を強化することにより、生物多様性ファイナンス・ギャップを埋める作業を優先する。(パラ19の内容)

*資金ギャップとは、年間7,000億ドル(ゴールD)とされ、生物多様性に負の影響を持つ資金(5000億ドル(ターゲット18)と、正の影響を持つ資金(ターゲット19)の両方を指す。

*この言い方には、資金構造には、“新規の基金”という選択肢も、①~④の運用改善という選択肢も両方が暗示的に含まれます。引き続き、新規の手段が必要との意見が必要と主張する国もあります。議長案のポイントは、新しい資金(Fund)を作るという選択肢も、既存の仕組みを改善するという選択肢も双方考えられるというところがポイントです。

検討される資金構造とは

①GEF、②カリ基金、③昆明基金、④生物多様性日本基金等の既存の枠組みで代表される、これら生物多様性のための資金構造を中心に、Green Climate Fundや多国間開発銀行融資などの生物多様性のためだけではない資金(①~④も含めて、資金ランドスケープという用語で整理)による効果も含めて検討する。

*GEFは独自の管理組織を持っています。カリ基金は、25日に設立が宣言され、マルチ・パートナー信託基金事務局(MPTFO)が受け入れ先、UNEPとUNDPが支援し、事務局は生物多様性条約という連携体制が発表されました。

資金構造が目指すこと

  • (a)昆明・モントリオール生物多様性グローバルフレームワークの目標Dに従い、2030年以降の生物多様性資金ギャップの漸進的な解消に大きく貢献すること
  • (b)2030年以降の生物多様性グローバル・アーキテクチャの既存の手段を補完するが、置き換えないこと
  • (c)多国間開発銀行などとのシナジーを活用し、世界な生物多様性ファイナンスの状況全体における、手段間の調整、補完性、条件整備を強化すること
  • (d)世界的なな生物多様性への資金において動員される資源の有効性、モニタリング、説明責任、透明性を強化すること
  • (e)公的資金、民間資金、革新的資金、南南協力を含むあらゆる資金源から資金を動員するための能力を創出または強化する;

COP16.2での意見

資源動員での資金への注文

特に途上国からは、資金への期待が、たくさんのxx(形容詞)な資金という言い方で求められました。一つ一つの言い方(日本語と英語)とそれが意味する趣旨(コロン以下)まとめると下記のような形になります。趣旨は、筆者の視点で補記したものです。助成金を受けたことのあるNGO等なら途上国の心情は程度の差はあれ理解できるのではないでしょうか。

  • 適切な規模(Adequate):「既存の資金は規模が低い」
  • 新規(New)の追加的(additional):「旧来の支援を名前を変えて「新しい資金として出したように」演出しない。今までの支援に加えた資金にしてほしい」」
  • アクセスが容易な(Easy accessible):「資金に不必要な条件や作業の多い申請手続きを加えないでほしい」
  • 効果的(Effective):「資金提供者側の「効果的」という仮説に限らず、途上国として効果的と思う活用も受け入れてほしい」
  • 時宜(Timely)にかなった:「募集期間等が設定され、審査や支払タイミングが長かったり、実際の送金が遅くならないような運用(国連の決済システムはすごい時間がかかるそうです)」
  • 予期可能な(predictable):「プロジェクト申請で採択されるかどうかよくわからないという資金は減らしてほしい」
  • 柔軟な(Flexible):「プロジェクトの途中修正や、資金の使途に制限を加えないでほしい」

ガバナンス

COPの権威の下に置く資金が必要で、これを模索するのが良いのではないかという整理が議長ノートで提案されています。

生物多様性条約第21条は、条約の実施のための資金メカニズムが必要である(There shall be a mechanism for the provision of financial resources)としていて、GEFが39条に基づき「暫定措置として」この21条に定める資金メカニズムとされてきました。暫定措置を30年以上やってきたわけですが、CBDの権威の下にある資金が必要という主張の法的根拠がこのような関係にあります。

これらの意見を基に25日19時半から締約国代表者+1名のみという参加人数を絞った交渉が行われました

国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平