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生物多様性条約第16回締約国会議再開会合初日の2月25日の現地時間14時に記者会見が開かれ、「カリ基金」の設立が発表されました。(プレスリリースはこちら)
カリ基金は、自然界の遺伝資源から得たデータをさまざまな有益な産業で商業利用している企業は、その収益の一部を基金に拠出することが期待されるもので、具体的な仕組みはCOP17において決定が見込まれるものです。
コロンビア・カリ市で2024年10月に開催されたCOP16の主要議題の一つ「DSI」の決定において設立が宣言されていました。
カリ基金は、国連開発計画(UNDP)と国連環境計画(UNEP)のパートナーシップによるマルチ・パートナー信託基金事務局(MPTFO)がホストし、生物多様性条約(CBD)事務局がカリ基金事務局を担当する形となります。本日の発足式では、この制度的取り決めを反映した覚書が署名され、これを以て設立が宣言されています。
これまで生物多様性条約に関連する資金は、二国間や多国間、開発支援銀行などの国や公的機関からの支出でしたが、民間企業からの資金を資金源にするという意味で全く新しい資金の流れを生み出すもので、今回の設立に期待する声は大きいです。
COP17に向けた検討では、一定の基準値以上供出した企業には証明書を発行する仕組みも検討されています。供出が期待される(とCOP16/2でまとめられている)産業界は、医薬品、化粧品、植物・動物育種および農業バイオテクノロジー、産業バイオテクノロジー、DSIに関連する実験機器、情報・科学・技術サービスなどで、学術機関、公的データベース、公的研究機関、当該分野で事業を営むがDSIに依存していない企業等はカリファンドへの供出の対象外となっています。
生物多様性条約として初めて「民間からの」資金の受け入れ態勢が整ったということは喜ばしいニュースとして国際社会では高い評価をするコメントが多く見られます。
国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平