SBI5二日目(10月17日) レビューフォーラム

今回初の試みとして、実施レビューフォーラム(Pilot open-ended forum for voluntary country review of implementation。正式には、実施の自発的各国レビューに関する思考的な暫定フォーラムというお試し感を強調した名称)が開かれました。

フォーラムは初日も含め、本会議の1日以上時間(8時間くらい)を使って、「あらゆる社会や政府の参加」「国家目標の設定」「資源動員や能力開発含む実施手段」の3テーマに分けて、各国の取組みをじっくり聞くセッションを展開しました。

テーマごとに運営国(ビューロメンバー国)から進行役を選んで進行しました。進行役はセッションごとの主要成果をまとめて、今後このフォーラムをどう扱うかという方針を検討する素材をまとめることが説明されました。

国を代表しての発言ではなく、正直な部分も含めて話しあおうというグランドルール(会議を行う場合のお約束事)を決めて、形式ばった司会進行ではなくファシリテータを用意してのセッションを展開。セッションの合間に、ファシリとコロンビア代表がサルサ(カリはラテンダンスの一つサルサ発祥の地)を踊って場を温めるなど、通常の会議では見られない進行を展開しました。

第1セッション「あらゆる社会の参加」

オープンフォーラムの「あらゆる社会の参加、あらゆる政府の参加、あらゆる条約の参加」については、非常に多くの政府から様々な工夫を実施していることが報告されました。自国の事例を共有したいという国の積極的な手がいくつも上がっていました(日本が上げなかったのが残念ですが)

専門委員会の設置や、ワークショップや対話の実施、利害関係者のマッピングを作って、いくつものワークショップを実施した事例などが報告されました。様々な仕掛けを作っているというのが印象的です。調整・コーディネーション・対話は共通の形といえそうです。

聞いたことのない仕組みとしては、アイルランドでは、市民会議、子ども会議、ナショナル会議といった民主主義のプロセスも生かした仕掛けの紹介がありました。

ユース(GYBN)からのインプットが非常に大事だと思いました。NBSAPや国家目標の設定その実施に関わる気持ちは強いが、意見をまとめ、適切なタイミングで政府に助言するのは重要だが、ユースとしての仕事(教育や研究、時に社会人としての仕事)のなかで行う必要があり、無償で行うことは持続可能でない。大事な仕事として認めてもらう仕組みや、ユース自身が意見を集約できるようなプロセスを作ってほしいとの意見がありました。

第2セッション「国家目標の設定」

第2セッションでは「国家目標の設定」に関する経験の共有です。

GBFは世界枠組みであり、23の目標も世界目標となっています。もちろん、各国の行動が蓄積されて世界目標が達成されるわけですが、どう世界目標と国家レベルの目標設定をうまくそろえたか、どのような要素が目標の実施に重要か、実施のモニタリング枠組みが有効かなどについて各国の意見が出されました。

目標設定においては、GBFの23目標が全加盟国に関係のある目標になっているので、23の目標全部に目標設定がしやすいという意見や、目標を法的拘束性がある形でまとめて本気度を上げていることが発表されました。

モニタリングについては、各国で試行錯誤している様子が報告されました。モルジブでは、サンゴ礁の保全に関するモニタリングを市民も研究者も国も実施していて、それらを集約する取組みをしているが常に改善のプロセスにあること、インドでは指標セットと同時に個々の指標の把握を担う責任官庁や研究機関等を示して、協力する体制を持っていることを紹介しました。いずれにせよ、モニタリングは環境省単独では限界のあることがら調整機関や協力体制を構築していることが共通しているように聞こえました。

EUやアイルランドでは、オンラインの追跡ツール(実施状況が分かりやすく表示されていうウェブサイト)を作成しているケースもあるようです。インドネシアやオーストリアでは、各省が生物多様性関連のどんな予算を実施しているかということも把握しているそうです。National Biodiversity Data BankやNational Biodiversity Dash Board、Action Trackerなど様々なツールを作っていることがオーストリアから紹介がありました。

第3セッション 実施の手段

第3セッションでは、「実施の手段(国家生物多様性財政計画や、能力開発計画含む)」

各国の取組みは、資金に限らず、様々な工夫が紹介されました。多様な主体の参画のための会議体、ユースの参画、国だけでなく地方自治体等による戦略や行動計画策定の促進などや、カーボンクレジットを保全に回すなどの資源動員手法を指摘する国もありました。

中国では政府予算だけでなく、多様な資源を模索する事例が紹介されました。生物多様性への投資の推進のために、中央銀行と共にグリーンファイナンスやグリーンボンドの方針を発表し、野生生物保護や保全のための主要事業や地方自治体レベルのアクション等の推進を示し、民間や地方も含めたグリーンインフラの資金調達を進めていることが紹介されています。COP16で作成される資源動員戦略を参考に国内資源動員戦略を作成する予定であることも紹介されました。

EUは、必要な資金と現在の予算のギャップを調査し(調査結果は公開)、そのギャップを埋めるための取組みや各国レベルの計画づくりを支援しているそうです。

サルサを踊るファシリテーターとコロンビア代表

国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平