もうすぐ折り返しというCOP16ですが、日に日に参加者が増え(そしてWIFIがつながらなくなり)にぎやかになってきました。とんとん拍子に合意が進む議題もあれば、なかなか合意の進展の遅い議題もあります。主要議題、資源動員、DSI、8(j)(先住民地域共同体に関する事項)、計画・モニタリング・報告・レビューは、連日コンタクトグループを開催しています。

注目議題の一つ、計画・モニタリング・レポート・レビューについては四日目の木曜になってやっとコンタクトグループが開かれました。全3回にわたってコンタクトグループを実施するという進行が提示されました(ですが、今日だけでも一つの段落に1時間半を使う等時間がかかることが予想されます)。

合意形成に向けた一進一退

交渉をじっくり見ると、新しい概念や用語を入れるかどうかといった動きがあります。

名古屋議定書の能力養成リストのなかでは、“削られましたが”、「中等教育後の学校、大学、その他の公式・非公式の教育プログラムの関連カリキュラムに生命倫理(Bio-Ethics)を統合し、先住民族と地域社会の権利に対する意識を高めるよう開発・促進する。」という言葉が能力養成のTo do リストにありました。生命倫理というキーワードが条約関係者間で合意された理解がないという理由でした。

また、尊重や保護すべきものとして、先住民地域共同体の権利を含む「人権」という表現がありましたが、これも、名古屋議定書で合意された「先住民地域共同体の権利を尊重し保護する」という表現に直されました。面白そうなアイディアも、合意が形成されてないと残りませんし、一方で、合意形成のために新しい概念を削られるかもしれませんが会議文書にのせ、締約国内の議論を触発することが必要になります。

今回入りませんでしたが、生命倫理を公教育・社会教育のカリキュラムに組み込もうという意見も、いつかこういう提案や後退を繰り返しながら196ヶ国の共通理解になっていくのかもしれません。

国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平