本記事は11月1日最終日の夜9時の時点で書いています。
生物多様性条約第16回締約国会議は、最終日の夜9時になっても、第1作業部会が終わらないため、本会議の開催が遅れています。生物多様性世界枠組み合意後、初のCOPであるCOP16は、 現地時間11月2日未明に終了することが期待されますが、無事に終わるかどうか怪しくなってきました。
主要議題である、GBFの実施加速、成果をはかる指標、実施のための資金拡大、COP15で大きな宿題として掲げた「電子化された遺伝子塩基配列情報の利用から生じる利益の保全・持続可能な利用の活用のための多国間メカニズム」の構築に向けた検討は、議長国によるハイレベル交渉が31日に実施され、1日早朝に議長テキストが示されました。そして、議長テキストを基とした交渉が、最終日の日中も非公開で行われていたようです。
ホスト国コロンビアが力を入れるのは、先住民地域共同体による自然を守る取り組みへの認識と尊重と支援に関する議題も、重大な議題を残したまま、本会議が開かれずにいます。
第2週目に入り、生物種の危機(IUCNレッドリスト)や、注目される30by30目標も、進展が鈍いことがIUCNや国際機関から発表し、意欲的な行動の必要性を訴えました。
一方、実施のための資金供与のニュースも流れましたが、交渉では資金をめぐる議論は連日交渉が続けられ、現時点でもギリギリの交渉が続き、合意に至るか予断を許さない状況(11月1日19時00時点)です。本会議資料(L文書)もいくつも非合意のbracketが入った文書が多く、いつ終わるか不透明です。
<交渉>
野心的なGBF達成のために検討すべきことと、旧態依然とした交渉とのギャップの大きさが交渉を遅らせているように思えます。特定の国(ブラジル・ロシア・アルゼンチン・EU)の主張で、決定の内容が大きく変わることに強い違和感を感じます。
<フォーラム>
今回のCOP16は、企業による参加が印象的でした。COP15より多くの企業人が参加し、企業関連イベントが行われました。、「生物多様性条約COPに来れば、ビジネスやファイナンス関係の新しい情報に触れ、ネットワークが作れ、営業や海外提携先が探せる」。結果ますます参加が増えるのではないか。CBDーCOPがどんどん大きくなる印象を受けました。
50名以上を超す日本の企業人も積極的にCOP16を体験されました。感覚的かもしれませんが、情報収集だけでなく、一部の先進的な日本企業による事例発表も増えたように思います。
日本企業の参加者からは「TNFDで日本がアダプター1番ということで、再び日本の企業がガラパゴス化したのかと思ったのだが、むしろ先行しているのだという感覚を得られた!」というポジティブなリアクションを聞けて大変嬉しかったです。
主要な発表 自然の状態/危機/測定
IUCN レッドリスト発表 樹木種の3分の1が絶滅危惧種
https://iucn.org/press-release/202410/more-one-three-tree-species-worldwide-faces-extinction-iucn-red-list
IUCN-UNEP-WCMC Protected Planet Report 2024を発表。17.6% 陸域・淡水域 8.4% 海洋が保護地域。2倍にしていかなければならない
https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/world-must-act-faster-protect-30-planet-2030
IUCNグリーンリスト87地域を超す
Nature Positive Initiative 自然の状態を測る共通手法案の協議開始を発表
https://www.naturepositive.org/metrics/
主要な発表 TNFD関係
TNFD アダプターが500社を超すことが発表。引き続き、日本は130社近いアダプターがおり世界1位の国。
https://tnfd.global/over-500-organisations-and-17-7-trillion-aum-now-committed-to-tnfd-aligned-risk-management-and-corporate-reporting/
日本がTNFDの戦略パートナーシップに参画。日本の支援で、どのような取り組みを加速するかに関心。
https://tnfd.global/tnfd-secures-funding-from-the-government-of-japan/
質の高い自然関連情報への市場からのアクセスの強化のためのロードマップを発表
https://tnfd.global/upgrading-market-access-to-decision-useful-nature-related-data/
自然移行計画策定支援に向けた協議文書を発表
https://tnfd.global/publication/discussion-paper-on-nature-transition-plans/
主要な発表 金融関係
Nature Action 100 「開示情報を判断するためのBenchmark(2024年4月発表)に基づく調査結果を発表
https://www.natureaction100.org/first-company-benchmark-release/
International Panel on Biodiversity Credit質の高いクレジットを確保するためのハイレベルガイダンス発
https://www.iapbiocredits.org/framework
生物多様性のための金融公約(Finance for Biodiversity Foundation)から、生物多様性測定手法のガイド第4版を公開。併せて、金融の日(10月28日)には、署名機関が13増え、190機関を超えたことが発表される。誓約した金融機関(190社)の総資産は22兆ユーロに上る。
国連環境計画ファイナンスイニシアティブ 農業、林業、鉱工業セクターにおけるスタートガイド発表
https://www.unepfi.org/industries/banking/sector-action-guidance-for-nature/
主要な発表 CBD GEF
GEFFへの追加資金提供が発表される。2億3300万USDに1億6400万USDが加わり、累積額約4億USDに。11ヶ国に加え、ケベック州が支援に加わったのが新しい動き。
CBD事務局 GBF23のアイコンを発表
国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平