日本から帰国する当日、日中は時間があったので、CORFOPALという団体の方にご案内いただきコロンビアの里山地域で行っている持続可能なコミュニティ作りを見学させていただきました。
この地域は、標高1800m近くの草地に僅かに低木林が茂る乾燥森林生態系で、山の上の方は雲霧林のような生態系を有しています。植生はマメ科の植物が多く、土壌があまり肥沃でないことが伺えました。また、トゲのある植物が目立ち、草地と低木林が混ざる開けた生態系らしい植生が見られました。
この地域は以前、田畑の拡大のために森を燃やし、環境を破壊したり、色鮮やかなカエルの違法売買が行われていました。しかし、2007年にプロジェクトがスタートし、現在は様々な環境保全団体や国などの力を借りて、持続可能な農業を通じた地域づくりを行っています。
その具体的な方法について、ご紹介します。
この地域の主な産業は農業で、アグロフォレストリーのようにバナナやキャッサバ、パパイヤなど多様な作物を混作することで、生物多様性に貢献するだけでなく、農家がモノカルチャーの単一収入ではなく、多様な収入を得られるようにしているそうです。
サトウキビ栽培も行なっており、サトウキビをパネラという黒糖の塊にする工場を見せて頂きました。
この機械は、この地域の農家だけでなく、45の農家が利用しているそうです。
絞った後のサトウキビは、汁を熱して、水分を蒸発させるための燃料に用いられます。しかし、今後はサトウキビを燃やすのではなく、肥料など別の形で使えるようにしていきたいのだそうです。私たちが見学した際には、馬が少し食べていました。
このサイトは、AZE(Alliance for Zero Extinction:絶滅ゼロ同盟)にも取り組んでおり、在来種や固有種のサボテンや樹木の植林も行っています。乾燥地帯なので、サボテンが在来種です。
プロジェクトを始めた方は、生物の知識だけでは、自然を守れないこと、保全を行うのは人であって、人に向き合わなければ、この課題は解決できないと言っていました。多くの生物学者は、生物しか見ておらず、人という視点がかけていることに課題意識を持っているようで、国を超えても課題は同じであることを実感しました。
地域住民たちも自然を守ることで出資してもらえたことから、自然を守ることが価値あることであることを学んだそうです。今では違法売買もなくなり、自然を守ることに対して誇りを持って活動に取り組んでおり、自然の価値を知る入口は必ずしも自然や生きものではないことを述べていました。これから生物多様性保全を拡大していくには、この業界内に固まらず、多様な価値や視点からより多くの人を巻き込んで行く必要性を感じました。
番外編
小学生が描いた地域の生きもの。コロンビアでは、絵を描くことが浸透しているようです。
ここでも外来生物のアフリカマイマイ
杭の中にインコの巣がありました。日本のスズメみたいですね
IUCN日本委員会事務局
稲場一華