5月15日、SBSTTA3日目です。午前の会合では、昨日の海洋の意見表明を継続した後、健康と生物多様性の議題(午後に継続)を扱いました。
夕方には、サイドイベントと同時に、指標コンタクトグループ下にできたターゲット13(ABS)に関する議長の友会合やターゲット17(遺伝子組み換え)に関する議長の友会合、夜8時から指標コンタクトグループが開催されました。
海洋の議題
海洋の議題は、二つのテーマがあります。一つは、生物学的または生態学的に重要な海域(EBSA)リストの改定手続きに関する議題で、もう一つは、その他の海洋の議題、特に、国の管轄権を超えた生物多様性(BBNJ)に関する協定との連動に関するものです。
EBSAについては、今回、改定や新規追加の仕組みについて数回のワークショップや専門家会合を経て作り上げたものの合意に向けたCOP16前の検討会議という位置づけです。海の境界線をめぐる衝突は世界各地で存在し、どの国が修正や追加を提案できるのか、公海は誰が提案し、その内容はどう検証されるのかといった国境問題が炎上してもおかしくない議題として、時間がかかっていました。
多くの国が、今回まとまった手続きを歓迎したように感じますが、一部明確化のため修正を提案する国もありました。この動きと連動して、公海生物多様性協定の早期批准を呼びかける国もありました。
他の海洋課題、特に、BBNJ協定との連携については、海洋沿岸の作業計画と、GBFの23行動目標との整合が話題になりました。海洋プログラムとGBFとの間では14のギャップ、淡水プログラムで12のギャップがまとめられました。いくつかの国は、ギャップの中でも、他の環境協定との重複を避け、明確に欠けている課題に集中すべきだとの意見と、島しょ国中心に、もっとCBDとして海洋沿岸や淡水の事業に取り組むべきとしてギャップを埋めるための作業をCBDが進めるべきという拡張派の意見が分かれるところでした。
作業の重複を避けるためにも連携が重要という意見が多くありました。
NGOからは、ブルーカーボン(藻場等の再生により沿岸域における炭素貯蔵機能を高める取組み)の取組みのために遺伝子組み換え技術や気候工学の野放図の推進を懸念する声が上がりました。
扱う文書が多いために、コンタクトグループの設立が宣言されました。
健康の議題
生物多様性と健康の議題は、生物多様性と健康に関するグローバル行動計画(Global Action Plan on Biodiversity and Health)という付属書や、健康セクターへの主流化など、様々な項目を含む非常に重要な議題となっています。
COP10から始まっているテーマですが、新型コロナの発生を受けて、議題の重要さへの認識が一段広がりました。本来は、COP15でアクションプランの採択を目指したのですが、ジュネーブで開かれたSBSTTA24で、遺伝子組み換えやDSIの記述を組み込むという意見が出されるなど収拾がつかなくなり、COP16に先送りされた議題でもあります。この間、生物多様性プランの23の目標達成が健康の領域にどう関り、どんな行動が求めらえるかなどがまとめられています。
締約国からは、この議題の採択への期待の声が大きいように思います。非常に包括的にまとまった行動計画であるため、もっと多くの要素を入れたいという意見が出されていたように思います。多国間協定との連携、AIや合成生物学等新規の技術との関係、感染症拡大後の復興計画(グリーンリカバリー)などについて、意見が出ていました。条約間連携の中では、WHOで交渉が始まったパンデミック防止条約を指摘する国もありました。また、実施のための資金や能力養成や技術移転などが話題になりました。
扱う文書が多いために、コンタクトグループの設立が宣言されました。
意見表明は、国だけではなく、国際条約事務局からも意見や提案が出されることもあります(NGO等と同じく、変更に国の支持が必要です)。今回は、汚染の指標や、健康のテーマもあり、水銀に関する水俣条約の事務局の発言もあります。
国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平
*今回の国際情報収集・発信業務は、経団連自然保護基金、地球環境基金の助成、ならびに、IUCN-Jへのご寄付を基に実施しています。このような情報発信を継続するためにも、IUCN-Jの活動へのご寄付をお願いします