IUCNリーダーズフォーラムが、スイス国際会議場で始まりました。2022年に済州島で開催された前回会議よりも数倍に膨れ上がった参加者数とのことです。また、企業や金融機関の参加も多数です。自然保護団体を中心とするIUCN会員団体としては、生物多様性分野を経営の上でも非常に意識している企業や金融機関の生の声を聞くことのできる数少ないIUCN主催のイベントとして今後発展していきそうな雰囲気を感じました。
フォーラムは、基調講演、シンポジウム、交流からなる集まりと、招待者のみのLEADというイベント、そして、ハイレベル同士のバイ会談が各所で開催されています。全プログラムはこちら(https://iucnleadersforum.org/programme)から観ることが出来ます。招待者のみの会合でも「自然金融を拡大するための政府債務への対応」など気になるキーワードは見られることになっています。
本リーダーズフォーラムの開催趣旨に「目標を達成するための共通の道筋を議論し、関連グループを行動に駆り立てる手助けをする」とあります。初日は、昆明モントリオール生物多様性世界枠組み(GBF)の実施に向けて、動き始めた機関や団体の取組みの現状と今後の思いなど、キーパーソンとキーワードを参加者全員に共有する趣旨であったように感じます。
GBF成立後、どこの国よりも先駆けて生物多様性国家戦略を策定した日本の取組みを松沢環境省地球環境審議官が紹介されたり、先月2年以上にわたる検討の上完成した「生物多様性関連財務情報開示枠組み(TNFD)」の責任者の発表、金融機関や企業の責任者、先住民地域共同体などがパネリストとして登壇されています。プレゼンテーションを使っての発表(いわゆる自身の活動PR)ではなく、何をしたかよりは、GBFの合意を受けて、どうして(WHY)行動しているのか、その行動の先に何を見出したかを共有する機会のように思いました。
全体会と、同時並行で複数の話題に分かれるセッションとがありますが、私が参加した「自然に根差した解決策(Nature-based Solutions)」のセッションでは、グリーンジョブ(緑の雇用)という視点にかなり特化した対話が行われました。国際労働機関(ILO。国際連盟の時から存在する最も古い国連機関)など労働基準を設定する組織の代表者と、国連環境計画とIUCNとで、グリーンジョブを概念として終わらせるのではなく、自然を守る労働者(ボランティアではない)としての基準と保障のあり方を検討していることが紹介されました。「世界GDPの半分を支える自然の守り手が、安月給なのはおかしいのだから、労働組合を作り、この仕事の価値を社会に正しく訴えるべきだ」という、自然の守りての待遇改善の話も出ていて、その通りと勇気づけられる場面もありました。
国際自然保護連合日本委員会
事務局長 道家哲平