Action
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生物多様性への脅威を削減するために。

野生種の乱獲をやめよう。

野生種の捕獲や取引は、持続可能/安全/合法的に行う。
①乱獲を阻止し、生態系への影響を最小限に抑える。
②病原体の流出リスクを低減する。
③先住民や地域の慣習を尊重しながら取り組む。
原文
先住民及び地域社会による慣習的で持続可能な利用を尊重及び保護しながら、エコシステムアプローチを適用して、野生種の利用、採取及び取引が、持続可能で、安全かつ合法的であることを確保することにより、乱獲を防止し、非対象種と生態系への影響を最小化し、病原体の異種間伝播のリスクを低減する。

本文(英語)はこちら

解説
  • エコシステムアプローチとは、土地資源、水資源、生物資源の統合管理のための戦略です。この戦略は資源の保全と公平な方法での持続可能な利用を促進するものです。生物多様性条約には、保全、持続可能な利用、遺伝資源の利用による利益の公正で公平な分配、という3つの目的があり、エコシステムアプローチを適用することはこの3つのバランスをとる助けになります。
  • 非対象種とは、採集・取引・利用の対象ではない動植物種のことです。例えば、漁の際に非対象種を混獲したり、狩猟の際に非対象種の生息・生育地を破壊することは、生態系に予期せぬ大きな影響を及ぼす可能性があるため、最小限に抑えなければなりません。

目標のポイント

POINT 1

このターゲットでは、

  • 野生種が採集されてから取引されるまでの過程を、持続可能で安全で合法的に行う

ことにより

  • 乱獲を防止する
  • 非対象種や生態系への影響を最小化する
  • 病原体の異種間伝播のリスクを低減する

ことを目指しています。

解説
安全であるとは、人間・他の種・生態系にとって安全であることを指します。例えば、当該野生種の利用が、外来種の拡散リスクを持つ場合や、病原体の異種間伝播の拡散に繋がる場合は適切な対策を行う必要があります。

POINT 2

野生生物種の直接的な利用は、海洋生態系における生物多様性損失の最大の要因であり、陸域生態系や淡水生態系においては2番目に大きな要因です。

POINT 3

野生動植物を持続可能で合法かつ安全に利用するためには、消費の段階での需要を減らしたり、収穫、水揚げの際の乱獲・混獲を防いだり、輸送や貿易の際に病原体が持ち込まれることを防ぐなどの取り組みが行われることが必要です。

目標達成に向けた活動の考え方

このターゲットの達成に向けた活動の例としては、

  • 野生動植物の捕獲・流通・利用・開示に関する法制度の強化・執行の確保
    (例:野生動植物の捕獲に関しては、漁業であれば、産卵期の禁漁や漁船の隻数や馬力数の制限など)
  • 持続可能な資源の利用、また合法的な手段での収穫を示す認証付きの商品を買う
  • 販売する動植物種の絶滅危惧状況を消費者に周知する
  • 動植物検査の適切な運用
  • 外来種問題の普及啓発

といったことが考えられます。

活躍が期待される人たち

野生種の採取から取引までを監視するという面で、国の活躍が期待されています。また、乱獲を防止し、非対象種や生態系への影響を最小限に抑えるためには、事業者や農林漁業団体の活躍が期待できます。病原体の異種間伝播のリスクを低減するという面では、検疫や感染症対策を行う国と、農林漁業団体(特に畜産農家)の活躍が期待されます。

  • 自治体
  • 事業者
  • 非営利団体
  • 教育研究機関
  • 市民

国内での参考事例

国は野生種の取引に関して、国際取引についてはワシントン条約、国内取引に関しては種の保存法に基づいて管理されています。

https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/index.html

認証制度は、水産養殖(MSC)、森林木材(FSC)、パームオイル(RSPO)、熱帯雨林由来製品(Rain Forest Alliance)など様々な消費財に広がっています。

また、病原体の異種間の伝播に関して、国は複数の省庁で対応しており、また普及啓発を行っている団体もあります。

目標や解説などは生物多様性条約事務局資料をもとに、IUCN-Jと国立環境研究所生物多様性領域がまとめました。また、記載内容は、特別な記載がない限り2023年度に参照した情報をもとにしています。

生物多様性条約事務局資料の原文はこちら

IUCN-Jと国立環境研究所は、連携基本協定を結んでいます。