Action
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生物多様性の保全を当たり前にするために。

あらゆる意思決定で意識しよう。

環境アセスメントから政策まで、官民を問わないあらゆる意思決定・活動に生物多様性の考え方を組み込む。
生物多様性とその多様な価値を、政策/規制/開発プロセス/貧困撲滅戦略/戦略的環境アセスメント/環境インパクトアセスメント/国家会計に組み込む。
また、これらに関連する公的・私的活動、財政、金融フローも足並みを揃える。
<言葉の注釈>戦略的環境アセスメント、環境インパクトアセスメント
原文
すべての関連する公的な活動及び民間の活動、財政及び資金フローをこの枠組のゴール及びターゲットに徐々に整合させつつ、生物多様性とその多様な価値が、政府内及び政府間のあらゆるレベルにおいて、並びに、特に生物多様性に顕著な影響を与えるセクターを含むすべてのセクターにまたがって、政策・方針、規制、計画及び開発プロセス、貧困撲滅戦略、 戦略的環境アセスメント、環境インパクトアセスメント並びに必要に応じて国民勘定に統合されることを確保する。

本文(英語)はこちら

目標のポイント

POINT 1

生物多様性の主流化とは、生物多様性の保全や持続可能な利用を、関連する部門や部門横断の計画・政策などに組み入れることを指します。

これは、公的な計画や政策だけで求められていることではなく、セクターを超え、社会全体にわたって行うことが必要とされています。生物多様性に依存していたり、生物多様性に影響を与える活動の多くは、生物多様性政策や関連する計画などの管轄外にあり、官民双方の意思決定レベルで関係があるためです。

POINT 2

組み入れる対象となる計画や政策の例として、以下のようなものが挙げられています。

  • 政策や方針、規制
  • 計画や開発プロセス
  • 貧困撲滅計画
  • 環境インパクトアセスメント
  • 戦略的環境アセスメント
  • 国家勘定
解説

環境インパクトアセスメントは、開発などを行う前に、その計画が環境にどのような影響を及ぼすか予測・評価を行い、その結果を公表して一般の意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作り上げる制度のことを指します。

戦略的環境アセスメントは、環境インパクトアセスメントが行われる事業の実施段階より上位の段階にある政策や計画・プログラムを対象に、政策等の立案主体が環境への影響をあらかじめ予測評価し、その結果を政策等の意志決定に反映させていく手続きを指します。

参考:http://assess.env.go.jp/1_seido/1-1_guide/1-1.html
http://www.jsia.net/6_assessment/fastips/01_What%20is%20ImpactAssessment_150407_Japanese.pdf
国環研ニュース32巻「戦略的環境アセスメント」Strategic Environment Assessment

国家勘定への統合とは、環境と経済の相互関係を捉える統計枠組みなどを活用し、国家勘定に環境の価値を組み込むことを想定しています。例えば、環境経済勘定(SEEA)などの枠組みを活用することが想定されます。

POINT 3

このターゲットでは、

  • 生物多様性の価値がすべての関連する意思決定の枠組みに反映される・主流化されるようにする

ことを目的としています。

その結果、

  • 社会の中での様々な意思決定において、生物多様性に適切な配慮がされる
  • すべての活動・すべての資金の流れが、KMGBFの目標とターゲットに整合する

ようになることを目指しています。

ターゲットでは、あらゆるセクターとしていますが、”生物多様性に顕著な影響を与えるセクター”としては、農業、林業、漁業、養殖業、金融、観光、健康、製造、インフラ、エネルギー、鉱工業、深海掘削が交渉過程において特出されました。引き続き、生物多様性条約や他の民間フォーラム(例:世界経済フォーラム)等では、生物多様性への依存や影響を強く持つ優先度の高いセクターの特定や、優先セクター向けガイダンスなども作られ始めています。

目標達成に向けた活動の考え方

このターゲットの達成に向けた活動の例としては、

  • 既存の計画や政策の中で、生物多様性の主流化を行うべきものを特定する
  • 公的な計画ではないものに関しては、奨励措置や規制の検討・実施を行う
  • 生物多様性の国家勘定への組込に関する研究を進める・算出を行う

といったことが考えられます。

活躍が期待される人たち

この目標の達成には、国や自治体・事業者が、それぞれの計画や政策に生物多様性配慮を組み込むことが特に期待されています。そのために非営利団体が働きかけを行ったり、教育研究機関が現状の分析や方法論・意思決定に関する支援を行うことも重要です。

  • 自治体
  • 事業者
  • 非営利団体
  • 教育研究機関

国内での参考事例

IUCN-Jでは、国内参考事例を募集しています。

この分野は国際社会では急速に整備が進み、様々な機関がガイダンスを作成しています。例えば、WBCSDでは、Roadmaps to Nature Positiveシリーズの中で、農業食料システム、森林産業システム、建設産業、エネルギー産業向けガイダンスを提供し、TNFDでは、これ加え、石油・天然ガス、鉱工業、化学、養殖、バイオテクノロジー医薬品向けのガイダンスを作成しています。

目標や解説などは生物多様性条約事務局資料をもとに、IUCN-Jと国立環境研究所生物多様性領域がまとめました。また、記載内容は、特別な記載がない限り2023年度に参照した情報をもとにしています。

生物多様性条約事務局資料の原文はこちら

IUCN-Jと国立環境研究所は、連携基本協定を結んでいます。