Action
10 23
生物多様性の恩恵を享受しつづけるために。

農林水産業をサステナブルに。

農業、林業、漁業、養殖業における生物多様性と持続可能性を強化する。
①生産性を高めることで農地の拡大を防止したり、アグロエコロジーなど新たな手法を通じて、持続可能なかたちで管理する。
②生産システムの回復力と長期的な効率性、生産力向上に貢献する。
③食料安全保障における生物多様性の保全・回復と自然の恩恵を維持する。
原文
農業、養殖業、漁業及び林業が営まれている地域が、持続可能な集約化やアグロエコロジー及びその他革新的なアプローチなどの生物多様性に配慮した活動の適用の大幅な増加などを含め、特に生物多様性の持続可能な利用を通じて、持続可能に管理されることを確保し、 これらの生産システムの強じん性(レジリエンス)と長期的な効率性と生産性、また食料安全保障に貢献し、生物多様性を保全・回復し、生態系の機能及びサービスを含む自然の寄与を維持する。

本文(英語)はこちら

解説
アグロエコロジー とは、持続可能な農業や食料システムを設計したり管理するために、生態学的・社会学的な考え方や原理をあてはめたアプローチのことです。例えば、生態学・社会学の原則に基づいて、地域の生態系をふまえた農業生態系を構築することです。

目標のポイント

POINT 1

このターゲットでは、

  • 人間の幸福や経済活動を支える生物多様性を維持すること

を目的として、

  • 農業・養殖業・漁業・林業における持続可能な管理・利用が行われる

ことを目指しています。

POINT 2

農業・養殖業・漁業・林業は、私たちの生活や経済活動に欠かせないものです。その一方で、これらの生産システムは生態系や生物多様性に様々な影響を与えます。食料、繊維、燃料の需要の増加は、生物多様性と生態系サービスの損失を増大させる要因となります。

POINT 3

そのため、農業・養殖業・漁業・林業における持続可能な管理・利用が喫緊の課題となっています。具体的には、持続可能な集約化やアグロエコロジー、その他の革新的なアプローチなどの生物多様性に配慮した活動の拡大が求められます。

POINT 4

持続可能な管理は生物多様性の保全に貢献するだけでなく、土壌肥沃度・土壌侵食防止・受粉の促進・病害虫発生の減少などの生態系サービスの面で生産システムに利益をもたらし、農業・養殖業・漁業・林業活動に従事する人々の幸福と持続可能な生活に貢献することができます。

目標達成に向けた活動の考え方

このターゲットの達成に向けた活動の例としては、

  • 有機農業や再生農業(不耕起)、長伐期施業を促進する
  • 持続可能な集約化(田んぼ、パームオイルなど)を行い、自然地域の農地への転換を抑える
  • 適応性の高い多様な作物や家畜の品種等の利用を強化する
  • 化学物質の使用を削減または代替する
  • 漁業における漁獲可能量(TAC)の設定や個別割り当て、漁業や流通認証制度を推進する

といったことが考えられます。

活躍が期待される人たち

この目標の達成には、農業・養殖業・漁業・林業における持続可能な管理を行うという面で、農林漁業団体の活躍が期待されています。また、持続可能な生産システムの仕組み作りを担うという面で、国の活躍が期待されます。さらに、それを科学的な側面から支えるという面で、教育研究機関施設の活躍も期待されています。

  • 自治体
  • 事業者
  • 非営利団体
  • 教育研究機関
  • 市民

国内での参考事例

IUCN-Jでは、参考事例を募集しています。例えば、不耕起栽培、超伐期施業などの各地の取組みから、参考事例が見いだせると考えられます。

生物多様性にも配慮した海洋沿岸の再生や保全、持続可能な水産業の推進として、環境省では「里海」というキーワードで事例等をまとめています。
https://www.env.go.jp/water/heisa/satoumi/index.html

目標や解説などは生物多様性条約事務局資料をもとに、IUCN-Jと国立環境研究所生物多様性領域がまとめました。また、記載内容は、特別な記載がない限り2023年度に参照した情報をもとにしています。

生物多様性条約事務局資料の原文はこちら

IUCN-Jと国立環境研究所は、連携基本協定を結んでいます。