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生物多様性の保全を当たり前にするために。

有害なインセンティブを見直そう。

生物多様性に悪影響となる補助金を大幅に削減し、有益なインセンティブを拡大する。
2025年までに、生物多様性にとって有害な、補助金や税制措置などのインセンティブを特定する。
また、有害性の高いものから順に、2030年までに少なくとも世界で年間5,000億ドル分を大幅かつ段階的に削減していく。
さらに、生物多様性の保全と持続可能な利用につながる有益な奨励措置を拡大していく。
原文

補助金を含む生物多様性に有害なインセンティブを2025年までに特定し、公正、公平、効果的及び衡平な方法により、廃止、段階的廃止又は改革を行う。最も有害なインセンティブから開始し、2030年までに少なくとも年間5,000億米ドルを大幅にかつ漸進的に削減し、生物多様性の保全と持続可能な利用のために有益なインセンティブを拡大する。

本文(英語)はこちら

目標のポイント

POINT 1

このターゲットでは、

  • 生物多様性に有害な補助金を含むインセンティブ(以降、「補助金等」)を減らすまたは改革する
  • 生物多様性に有益な補助金等を増やすこと

の両方が求められています。
推定によると、有害な補助金等の額は、有益な補助金等の額よりも大幅に高いとされています。このアンバランスを是正する必要があります。

POINT 2

生物多様性に有害な補助金等には、生物多様性に有害な影響を及ぼす生産補助金(例:農業生産に関する補助金)や消費者補助金などがあります。資源利用を管理する政策や法律(例:土地所有の仕組みや環境資源管理など)も有害な影響を及ぼす可能性があります。

生物多様性の保全とは異なる他の社会的な目的を達成するために設計された制度が、意図しない結果や副反応を生み、結果的に生物多様性に有害な行動を引き起こしてしまうことが多くあります。

生物多様性に有益な補助金等には、公的資金や助成金による土地の購入や、保全地役権なども含まれます。

POINT 3

2025年までには、生物多様性に有害な補助金等を特定し、2030年までに、少なくとも年間5,000億米ドルを減らすことが決められています。
減らし方に関しても、最も有害な補助金等から減らしはじめることや、公正衡平で効果的な方法で減らすことなどが決められています。

目標達成に向けた活動の考え方

このターゲットの達成に向けた活動の例としては、

  • 生物多様性と関係の深い制度の調査・整理・見直しを行う
  • 減農薬や保全地役権など、生物多様性の保全に貢献する取組を促進する

といったことが考えられます。

活躍が期待される人たち

この目標の達成には、国や自治体による制度面での取組と、農林漁業団体や非営利団体による制度を利用した取組、非営利団体による提案や監視などの働きかけが特に期待されています。

  • 自治体
  • 非営利団体
  • 農林漁業団体

国内での参考事例

日本自然保護協会をはじめ自然保護に関わる6団体では、農地の生物多様性保全を目指し、農地の環境保全等に使われる「農業・農村多面的機能交付金制度」に対して提言活動を行いました。

この制度は、農業・農村がもつ、「食料等の生産」以外の機能(国土保全、水源かん養、自然環境保全、景観形成等の多面的機能)を発揮するために農業団体等の活動に支払われる交付金の制度です。
当該6団体は、当制度に関し、生物多様性を劣化させうる事業にも交付金が支払われた事例がある点や、交付金の効果検証が制度運用状況に関するアンケート結果のみで行われており、本法の目的である公益的機能が発揮できたのかが十分検証できていない点などを指摘しています。

目標や解説などは生物多様性条約事務局資料をもとに、IUCN-Jと国立環境研究所生物多様性領域がまとめました。また、記載内容は、特別な記載がない限り2023年度に参照した情報をもとにしています。

生物多様性条約事務局資料の原文はこちら

IUCN-Jと国立環境研究所は、連携基本協定を結んでいます。