Action
2 23
生物多様性への脅威を削減するために。

生態系を回復しよう。

劣化した生態系の30%を回復させる。
生物多様性と生態系機能・サービス、生態系が本来もっている「健全性」や「連結性」を向上するために。
劣化した陸/内陸水域/海域/沿岸の少なくとも30%で、生態系回復に向けた効果的なアクションを行う。
原文
生物多様性と生態系の機能及びサービス、生態学的健全性及び連結性を向上させるために、2030年までに、劣化した陸域、陸水域、沿岸域及び海域の生態系の少なくとも30%の地域で効果的な回復下にあることを確保する。

本文(英語)はこちら

解説
  • 劣化した地域とは、その地域の生態系が持つ「生態系サービス(人間が生態系から得られる恩恵)を提供する能力」が持続的または長期的に低下している場所を指します。
  • 効果的な回復とは、十分な資金と長期的なモニタリングを伴う活動のもと達成されるものです。生態系の回復には時間がかかるため、この目標は劣化した地域の完全な回復を求めるものではありませんが、少なくとも効果的な回復活動が開始される必要があるとしています。
  • 生態学的健全性とは、ある地域の生態系の構成、構造、機能、生態学的プロセスが本来の自然に近い状態にあるかどうかを指します。生態学的連結性とは、生物が生息地間を障害なく移動できるかどうかを指し、生物種の生息地の維持を保証するものです。生態系を回復させる活動を行う際、この2つの性質を考慮することが重要です。

目標のポイント

POINT 1

この目標では、

  • 2030年までに、劣化した地域(陸域、陸水域、海域、沿岸域を含む)の総面積の少なくとも30%が効果的な回復下にある

ことを目指しています。

POINT 2

人間による生産活動(例えば、田畑や放牧地の拡大、持続不可能な農業や林業、それに伴う気候変動など)によって、世界中で生物の生息地が劣化しています。統一された測定方法がないため様々な推定がなされていますが、世界では陸域面積だけで少なくとも20~40%が劣化していると考えられています。

POINT 3

土地の劣化は生態系に悪影響を与え、またそれが生物多様性喪失にもつながり、私たちが自然から受けられる恩恵も減っていきます。この状況を変えるために、まずは劣化している土地の30%を回復傾向に持っていく必要があります。

POINT 4

生態系の回復には時間がかかるため、劣化した土地を回復させる活動は十分な資金と長期的なモニタリングの下行われる効果的なものである必要があります。また、生態学的健全性や連結性にも考慮することが重要です。

目標達成に向けた活動の考え方

このターゲットの達成に向けた活動の例としては、

  • 生物多様性にとって重要な地域を特定し状況を分析する
  • 分断されてしまった自然生息地のつながりを改善する
  • 在来種を使った復元活動をする
  • 地域固有種を人為的に自然に戻すこと(アユの放流、トキの放鳥など)を象徴とした、地域生態系の復元を行う
  • 農林漁業団体と協力した自然再生(森林農法、有機農法、旬の作物を育てる、輪作の促進など)を行う
  • 放牧の管理(放牧の密度を下げるなど)を行う
  • 土壌の改善を行う
  • 外来種の防除、侵入防止を行う
  • 自然地域の利用者や住民と地域管理について積極的に話し合う

といったことが考えられます。

活躍が期待される人たち

この目標の達成には、生態系の劣化に関わる農林漁業団体などの事業者、また自然再生に関わる非営利団体の活躍が期待されています。また、それらの活動を経済的に支援するために国や自治体の活躍も期待されます。

  • 自治体
  • 事業者
  • 非営利団体
  • 教育研究機関
  • 市民

国内での参考事例

環境省では、自然再生推進法に基づく自然再生や、小さな自然再生活動事例集 ~パンフレット~ の発行を行っています。

大規模な生態系レベルの再生以外にも民間による自然再生事例も増えてきました。「小さな自然再生」研究会では、水辺の自然再生事例の紹介や研修などを実施しています。

目標や解説などは生物多様性条約事務局資料をもとに、IUCN-Jと国立環境研究所生物多様性領域がまとめました。また、記載内容は、特別な記載がない限り2023年度に参照した情報をもとにしています。

生物多様性条約事務局資料の原文はこちら

IUCN-Jと国立環境研究所は、連携基本協定を結んでいます。