Action
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生物多様性への脅威を削減するために。

生物多様性と気候変動を統合的に解決しよう。

気候変動による生物多様性への影響を減らし、自然の回復力を高める。
気候変動および海洋酸性化による生物多様性への影響を自然を活用した防災・減災によって最小化し、自然の回復力を高める。
また、気候変動対策による生物多様性へのネガティブな影響を減らし、ポジティブな影響を増やす。
原文
気候変動対策による生物多様性への負の影響を最小化し正の影響を向上させつつ、自然に根差した解決策及び/又は生態系を活用したアプローチ等によるものを含む緩和、適応及び防災・減災の行動を通じて、気候変動及び海洋酸性化による生物多様性への影響を最小化するとともに、その強じん性(レジリエンス)を増強させる。

本文(英語)はこちら

解説
  • 自然に根差した解決策(Nature-based solutions)とは、防災、農林水産業の持続性の確保、貧困対策などの社会課題解決の取り組みを、地形、地質、水循環、動植物など、その場所の自然の特性を踏まえたやり方で進めるアプローチのことを指します。この概念は幅広いものであり、下記の生態系を活用したアプローチを含む複数の概念を内包しています。
  • 生態系を活用したアプローチ(Ecosystem-based approaches)とは、気候変動の悪影響に対処するための戦略の一部として、生物多様性と生態系サービスを利用することを指します。気候変動の緩和や適応・防災や減災を目的として生態系を利用する概念も存在します。

※「自然に根差した解決策」と「生態系を活用したアプローチ」という似た概念が併記されているのは、目標の交渉過程で、より広範な概念を指すNbSと歴史的に取り組まれてきた適応に焦点を当てたEbAどちらの言葉を採用するのか決定できなかったためです。

目標のポイント

POINT 1

気候変動は、生物多様性損失の直接的な要因の一つです。大気中の二酸化炭素濃度の上昇は、気候変動に加え海洋酸性化も引き起こしています。これらに対処する取り組みとして、自然や生態系を活用したアプローチが有効です。

POINT 2

このターゲットでは、

  • 気候変動と海洋酸性化が生物多様性に与える影響を最小化する

ことを目的として、

  • 「自然に根差した解決策」や「生態系を活用したアプローチ」を用いて、気候変動の緩和や適応、防災や減災対策を行い、レジリエンスを高める
  • 気候変動対策を行う際は、生物多様性への負の影響を少なくし正の影響を増やす

ことを目指しています。

POINT 3

自然に根差した解決策や、生態系を活用したアプローチは、気候変動の影響に対する生態系と人間の生活のレジリエンスを高める可能性を秘めています。また、このような対策をとることによって地域コミュニティの社会的・経済的・文化的な利益向上にもつながります。

POINT 4

一方で、自然や生態系を活用した対策が適切に設計・実施されなければ、生物多様性や生物多様性に依存する人々に意図せず負の影響をもたらす可能性もあるため、注意が必要です。

目標達成に向けた活動の考え方

このターゲットの達成に向けた活動の例としては、

気候変動と海洋酸性化が生物多様性に与える負の影響を最小化するために

  • 森林伐採や土地利用の変化による二酸化炭素の排出を削減する
  • 再生型の農業(例:不耕起)を推進する
  • 気候変動を考慮した保護・保全地域を設定する

「自然に根差した解決策」や「生態系を活用したアプローチ」を用いて、気候変動の緩和や適応、防災や減災対策を行い、レジリエンスを高めるために

  • 湿地を遊水地として整備し、洪水時の防災・減災や地域活性に活用する
  • 雨水浸透機能を持つ都市内樹林、緑地を確保する

気候変動対策を行う際、生物多様性への負の影響を少なくし正の影響を増やすために

  • 太陽光パネルや風力発電用タービンを設置する際は、生物多様性への影響が低い場所を選定する
  • 地球温暖化対策推進法 に基づく再生可能エネルギー促進区域の設定を進める
  • 戦略アセスや環境アセスを活用し、生物多様性と両立する再生可能エネルギー設備立地を考える

といったことが考えられます。

活躍が期待される人たち

この目標の達成には、生物多様性に直接的な影響を与え得るという面で、農林漁業団体が生態系に配慮した生産活動をすることが期待されています。
また、企業などの事業者が「自然に根差した解決策」や「生態系を活用したアプローチ」を採用したり、生物多様性に配慮した再生可能エネルギー施設を設置するなどの面で活躍が期待されています。
それに伴い、自然保護団体など非営利団体にも、事業者が行う事業が生物多様性に影響を及ぼしていないか監視するという面で活躍が期待されています。
また、国や自治体が保護・保全地域を設置したり、生物多様性への影響が少ない取り組みを促進するという面で活躍が期待されています。

  • 自治体
  • 事業者
  • 非営利団体
  • 教育研究機関
  • 市民

国内での参考事例

複数の自治体が「生態系を活用したアプローチ」を用いた取り組みを行っています。

また、非営利団体が再生可能エネルギー事業に対する現地調査や提言を行っている例もあります。

目標や解説などは生物多様性条約事務局資料をもとに、IUCN-Jと国立環境研究所生物多様性領域がまとめました。また、記載内容は、特別な記載がない限り2023年度に参照した情報をもとにしています。

生物多様性条約事務局資料の原文はこちら

IUCN-Jと国立環境研究所は、連携基本協定を結んでいます。